私の会社に年末年始の休みはありません。まず、大晦日はファイルを全部新しく作りなおします。現在書類の法定保存期間は7年が基準ですので7年前の書類を廃棄するのですが、ホッチキスをはずし全部裏紙として使います。ファイルのフォルダーも使えなくなるまで使います。この作業で数時間かかります。過去はケチくさいと言われる事もありましたが、今は「エコ」とほめられますので時代も変わったものです。私自身はこういう節約と忍耐が会社経営者の基本だと思っています。
そして元旦。日本のクライアントの F社長は夢見る牛の絵をご自分で描いてすべてハンドメイドの年賀状をくださいました。思えばワープロが会社に登場したのは25年くらい前で個人が買えるような価格のものではありませんでした。印刷もデスクトップ印刷などありませんでしたから高額で、皆自分で工夫して年賀状を作ったものです。今は紋切型の文章に宛名にも本文にも自筆などない年賀状がふえ、個人なのに企業やお店からの年賀状と何ら変わりがありません。そんな中でユニークな年賀状は上手下手の問題ではなく、まさに心のギフトと思えます。
香港のビジネスパートナーとさっそくチャットで賀詞交換をしました。「今年は変化の年になるに違いありません。この変化が地球上のより多くの人々にもっと多くの幸せをもたらすことを祈っています。」と私。「そうだね。世界経済が早く立ち直ること、貿易量が正常に戻ることを望んでいるよ。しばらくは困難な時期が続くのだろうけど。」その後は友人たちの消息について30分ほどあれこれ話しました。最初の出会いから丸10年、共通の友人の多いこと。
シンガポールでコンサルタント会社を経営している日本女性ともメールでやり取りをしました。彼女は日本の公的機関に勤務時代にシンガポールに駐在し製造業を経営しているシンガポール男性と知り合い、結婚しました。現在ご主人は仕事の関係から単身で上海に住んでいるそうです。女性の社会的地位が上がれば簡単に職を辞すわけにはいかず、こういう別居キャリア・カップルも今後ふえていくのでしょう。
彼女が言うにはシンガポールは元々金融が大きな産業の1つだったので、投資銀行などの縮小、閉鎖で、知り合いのバンカーの中にも解雇された人がいるそうです。欧米系企業での「朝通告、そしてそのまますぐに退社」というのをまざまざと見せつけられてさぞ仰天したことでしょう。念願のドバイにも旅行したそうですが、建物などハードはすごいもののサービスのレベルがまだ低く、同じ金融国家として「これならシンガポールは安泰」と思ったそうです。
私自身にとって2009年はまず 5月に起業10周年目を迎えます。そして10月にはメルマガ創刊から10年目を迎えます。 1年目で廃業するかも知れないと覚悟しての船出でしたが「仕事の質」のみを追いかけ欲張らなかったのがここまで続いた秘訣かも知れません。会社員のままなら「定年まであと何年」という境地でしょうが、毎日毎日自分を試せ、進化し続ける楽しみと多くの方々のおかげで「生かされている」ことを感謝できるのも一人企業の良さだと思っています。
河口容子
[306]急増する国際詐欺
2004年12月10日号「気配り名人は詐欺をも防ぐ」で触れたように JETRO(日本貿易機構)のニュースレター(メルマガ)で貿易アドバイスのコラムを執筆するのも私の仕事のひとつです。そもそも私の記事は日本の貿易の初心者あるいは経験があっても決まった商品を決まった相手と繰り返して取引しているような方を対象にアドバイスするものですが、この公的機関によるニュースレターはネイティブの方により英訳され海外へも発信され、しかも海外の読者のほうが圧倒的に多いことから配慮も必要です。まずは外国人により日本人が被害を受けているという構図を強調するような書き方は外交上避けねばなりません。逆に日本人の弱みを詳細に記述すると日本人の恥さらしでもあり、また外国人に悪利用されても困ることになります。ところが、「日本人の考え方や行動様式がよくわかって役にたつ」と外国人からファンレターをいただいたりするので複雑な気持ちにもなります。
上記のコラムでは国際詐欺に関する話題をたびたび取り上げざるを得ませんでした。私のことを詐欺の研究家と勘違いしている読者もおられるのではないかと思うくらいです。国内でも振り込め詐欺があれほど注意喚起されているにも関わらず被害が減らないのと同じように国際的な詐欺の被害に遭うビジネスパースンが後をたたないのです。多額の現金を現地に持参し、取られた上に殺害までされるというケースは珍しくなくなりました。
詐欺師というのは「金銭欲」や「功名心」を巧みについてきます。また上手に乗せられ自信過剰になったり、相手を信じこんでしまったりすると他人からの忠告や意見をなかなか受け入れらなくなります。だまされた人は異句同音に「相手を親切な良い人だと思っていた」「いよいよ自分にも運が向いてきたと思った」そうです。無邪気と言えばそれまでですが、自分の都合が良いように話を解釈しすぎるあまりに不自然さに気付かないのではないかとも思えます。「労せずして多くの利益が出る」ことや「相手にまかせておけば自分の利益になるようはからってくれる」ことは世の中にそうそうないからです。
私自身はまず「どうして相手を信じられるのか」という分析をしています。「信用調査をして問題がなかった」「業績の良い上場企業である」「社会的な地位が高く詐欺行為はできないはず」「事件がおきたら仲裁してくれる人物や機関を知っている」などなどです。もちろん相手が騙っていないか、その企業の実態があるのかも調べます。次に取引形態に不自然さがないか、いろいろシミュレーションをして最悪の事態に陥ったらどう対処するのかも考えておきます。また、ずっと取引をしていて気心が知れていても手抜きせず、気も抜かず、おつきあいをすることにしています。惰性からは良い仕事は生まれず、勝手な思いこみは相手の変化に気付かず墓穴を掘ることもあるからです。
最近ビジネス仲間の間でいつも話題になるのはスパム・メールの多さです。詐欺に遭うというよりも業務の効率を著しく劣化させています。企業のサーバーもウィルス駆逐ソフトもセキュリティがどんどん厳しくなり、必要なメールまでもスパム・フォルダーに収納されているときがあります。おかげでスパム・フォルダーの中味を目を皿のようにしてチェックしてから削除せねばなりません。受信すらしてもらえない場合はメールをプリントアウトして FAXすることもあります。「これからはメールをしましたから届かなかったら言ってね、といちいち電話しなくちゃいけないわね。」と冗談まじりに JETROの友人。これぞまさに本末転倒。著名IT企業、銀行、国際宅配便などの企業を騙ったスパム・メールも多いので読者の皆様もくれぐれも注意なさってください。
河口容子
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