総合商社では中国がバリバリの社会主義国家だった頃から取引を行っているたくさんのスペシャリスト集団がいます。私は中国語もできませんし、英語の通じる香港以外は取引経験がなく、「中国は素人」で通してきました。一生無縁な所だと思っていたところ、独立してから香港のビジネスパートナーのおかげで中国ビジネスに足を突っ込むようになりました。仕事で出会うのは人ばかりでなく、商品であったり事柄であったりもするのですが、それは何かのご縁と思い、その都度興味しんしんなのが私の性格です。
先週は中国関係でたくさんニュースがありました。まず13日に中国政府が輸出に伴う増置税 17%の還付を引き下げるという発表をしました。増置税というのは売上税のようなもので輸出売上については全額還付されていました。ちなみに日本でも輸出取引については消費税は課税されません。この引き下げにより、輸出を制限したい品目は還付制度廃止、促進したい農産物などは現状維持、私たちになじみの深い電機製品やアパレルは 13%の還付となります。もともと財源不足から還付が遅れがちと聞きましたから、今回の措置は増税というより現実的な形への調整とも言えます。中国の輸出業者にとっては痛手です。おそらく輸出価格の値上げにつながるのでしょうが、世界中へのデフレの輸出が緩和されるとも思えますし、安い中国での生産価格だけを頼りにビジネスを繋いでいるような日本の中小企業、特にブローカー的存在の企業には死活問題になるかも知れません。
[055]ランゲージ・プロブレム
インドネシアの自然素材を用いたリビング用品メーカーのオーナーから相談のメールをもらいました。先日のギフトショーでインドネシア政府の貿易機関のコーナーに出展していた企業です。昨年、今年とインドネシア出張の際お世話になった貿易機関の管理職がミッションリーダーで来日しているため、挨拶に行った帰りのことです。彼のブースの日本語の表示が間違っていたのに気づき、訂正してあげたことから知りあいになりました。
彼いわく、ブースに訪れてくれたお客さんにお礼のメールを出したところ何の反応もない、会場では「日本語さえできれば商売をしてもいい」というような事を言った人が何人かおり、日本語のできるインドネシア人を現地と日本で探したが代理店をやってもいいと言う人が見つからないのでどうしたら良いかと。彼はうまく行かないのは言葉の問題、つまりランゲージ・プロブレムだと思いこんでいるようです。私は言葉だけの問題ではない、と返事をしました。
まず彼の会社は会場で十分にカタログを用意していませんでした。日本の来場者というのは会場で真剣に商談をして発注していくことはまずありません。だいたいカタログをもらい、質問があればして、会社に帰って情報を整理してから引合に入ります。また、もともと情報収集だけが目的で、バイヤーのふりをしている場合もあります。日本人側からしてみれば、たくさんまわったうちの聞きなれない1社が英語で礼状をくれたところで、カタログももらっていなければ何の会社だったか思い出すことすらないかも知れません。