先々週、マレーシアに関するセミナーに出かけた話を書きましたが、半月ほどたってマレーシア通産省のロゴの入った封筒が郵送されて来ました。封を切ると中身はセミナーの出席のお礼状で最後にラフィダ・アジズ大臣のサインがありました。何という完璧さ。出席者全員にこのレターを出したとすれば彼女は 600通以上にサインしたことになります。そしてサインは判読できないこともあり、サインの下に氏名や肩書きが打ち込まれていることが多いのですが、氏名のみで通産大臣の肩書きは入れてありませんでした。「もう1回会ったのだからわかるわよね。」と言わんばかりのレター、彼女が講演で言ったごとくマレーシア人のフレンドリーさがうかがわれました。
最近の日本ではセミナーの出席者に対するフォローアップどころか、展示会で商談までしたのになしのつぶての企業すらあります。忘れた頃にお礼状をもらっても儀礼的な印刷物だけではインパクトがありません。書状はトップの名前で書かれていたりしますが、担当の人が機械的に出しており、当のご本人は出状されている事すら知らないケースもあることでしょう。ここが印刷と肉筆のサインの重みの違いです。本人だけしか書けないたった 1行の違い。日本には印鑑がありますが、本人が押したという証拠はありません。オフィスでは代わりの人が押すこともありますし、上司のシャチハタを部下が常時預かっていることすらあります。
[047]輸入から起業へ
JETRO(日本貿易振興会)の地方オフィスとその地域の商工会議所の主催で「IT活用小口輸入実践塾」という企画があり、何とそのゲスト講師の役をおおせつかり、先日2つの都市で講演をして来ました。この塾、いわゆる社会人を対象とした有料のセミナーですが、貿易実務を教えるのではなく、商品選びから売り方まで教え、実際に受講生は自分のお金を出して輸入を行い、希望者には商店街のスペースまでトライアルに用意されるというものです。講師陣はいずれも現役のビジネスマンです。輸入を切り口として新商材をふやす人や起業家を育成して地域の活性化に役立てようというものです。
小口輸入という言葉は聞きなれない方もいらっしゃるかも知れませんが、個人輸入があくまでも自分のために商品を海外から輸入するのに対し、量や金額は少なくても販売用に輸入するのが小口輸入です。私は国際機関から委嘱され日本で行われるトレードショーのために招聘する企業選定を行い、日本市場向けの商品開発や日本のビジネス慣習に関するアドバイスをするという仕事をアセアン各国で行っています。そして、このトレードショーに来てくださる日本のバイヤーも中小企業の方が圧倒的に多く、その国ならではの特徴をもち、品質がよく、価格もリーズナブルで、少量でも対応してくれる海外企業を私は選定するようにしています。