3週にわたり、インドネシアとブルネイの出張について書かせていただきましたが、読者の方から「文化の混ざりあうインドネシアではどんな食べ物を食べたのですか」とのご質問をいただきました。私があまり食べるものについて書かないのは旅行記ではないこと、好き嫌いが多いこと、消化器系が弱いので油こいものや甘いものが増え、疲労のたまりやすい海外出張では食べる量を日本にいるときの 6-7割におさえてしまう個人的な理由もあります。イスラム圏ではアルコールをすすめられることはありませんので体調維持には大助かりです。
出された水を心配なく飲め、外食でお腹を壊すことがめったにない日本からインドネシアに行くとかなり生活が困難になります。水道の水は現地の人も飲んでおりません。市販されているミネラル・ウォーターか煮沸した水をさまして使うかのどちらかです。私は用心のため、歯磨きのすすぎもお湯で行い、最後はミネラル・ウォーターを使っています。どんな水を使っているかわからない生野菜サラダや氷も要注意です。とはいえ、一流ホテルやレストランではもちろんサラダもかき氷もアイスクリームも何の不安もないどころか、5ツ星ホテルの林立するジャカルタでは東京にもないようなすばらしいレストランが和食も含めたくさんあります。特に「和食好き」というのはインドネシア人の中でステータス・シンボルのようにも聞こえます。
食べる前にこの国では水分補給がまず必要です。ホテルや車の中は冷房が効きすぎ、寒がりの私としては冷房は消して寝ることにしていますがそれでも喚気孔から吹き込む空気が冷たくて夜中に目が覚めることがしばしばあります。会社訪問時に工場に入ることがよくありますが、こちらは冷房などありません。もちろん戸外は熱帯です。この寒暖の差で冷房病になったこともありますし、水分不足になっていることに気づかないことがあります。だんだん頭が働かなくなり、水分を採ると急に体のすみずみまで蘇る気がするのは危険信号状態かも知れません。
[041]不思議の国ブルネイ
ブルネイというと、石油が出るお金持ちの王様(サルタン)の国で有名ですがどこにあるかご存知ですか?赤道をはさんだ大きな島ボルネオ島の北の方にあり、三重県くらいの広さの小国です。ちなみにボルネオ島の北側はマレーシア領、南側はインドネシア領でカリマンタンと呼ばれています。この国で産出される鉱物性資源(石油、天然ガス)の実に99.9%は日本に輸出されており、私たちの日々の生活を支えてくれています。人口は約33万人。人口ひとりあたりの統計数字からはアジアで日本に次ぐお金持ちということです。
私は以前から一度ブルネイに行ってみたいという気持ちがありました。石油のおかげで個人所得税も払わなくていい、他に大きな産業もなく、当然大きな消費市場もない国で平均月収が20万円というのはどんな暮らしぶりなのか、日本の社会構造とはまったく違う世界がそこにあるに違いないと思ったからです。シンガポールで乗換え、ブルネイ航空を予約したもののその便は急遽キャンセル、その日のブルネイ航空最終便に押し込まれ主都バンダル・スリ・ブガワンの空港に着いたのは夜中の11時半であたりは闇に包まれていました。暗闇に目を凝らして見ると景色はどうやらマレーシアに似ています。
翌朝はみごとなほどの快晴。とんでもなく暑くなりそうです。来る前の情報では、「人が少ない」「のんびりしている」「物価が日本とほぼ同じ」。確かにインドネシアに比べれば、首都というのに人は少なく、どこもかしこも新しく、ぴかぴか磨きあげられた感じです。ごみごみした日本に住み慣れた目からは「生活感がない」の一語に尽きます。ホテルのロビーには政府機関の女性 3人がずらりと民族服で並んで待っていてくれました。日本の政府機関の職員が和服で仕事をしているようなものですから、お国柄とはいえ、単純な不思議を覚えます。
街の中の看板はマレー語、英語、アラビア語で表記されています。中国系の人も多いため漢字の看板もあり、ありとあらゆる文字がにぎやかに目に飛びこんできます。政府機関の女性に聞いたところ、アラビア語は読めるが話せない、とのことでしたので、おそらくお祈りはすべてアラビア語なのでしょう。来たときの飛行機の中でも離陸前に旅のお祈りというのが、機内にいきなり流れ出したのですが、アラビア語の音声にマレー語と英語の字幕スーパーがついていました。