[175]こんな世の中だからブルネイに行ってみよう

BSE、耐震偽装、ライブドア、防衛庁とまったく誰を信じていいやらわからない世の中になってしまい、トリノ・オリンピックも蓋を開ければ、なかなかメダルには遠く、事前のマスコミの大騒ぎは何だったのか、選手たちにとっても期待されないのも困るでしょうが直前にふってわいたような過剰期待では気の毒なような気がします。
そんな中、ブルネイへの投資セミナーが開催されました。ブルネイの第一次資源産業省のダト・ハミッド次官を迎え、都内のホテルの会場には寒さを吹き飛ばすかのごとくブルネイ・ファンが集まりました。こんな世の中だから、またブルネイに行ってみたいと私は強く思いました。
日本は「勝ち組と負け組」に例えられるように 1億総中流社会から二極分化社会に移行しつつあります。一方、ブルネイは負け組みのいない社会です。国民ひとりあたりの総生産はアジアでは日本に次ぐ豊かさ、住宅事情については国が優先事業として取り組んでいますし、インフラも整い、公共料金も日本の 1/3から 1/5です。産油国ですのでガソリンも安い。個人所得税はなし、教育費も医療費も無料です。
ボルネオ島の熱帯雨林の中にあり、地震、台風、津波もなく、殺人事件など聞いたこともないというまさに正式国名「ブルネイ・ダルサラーム(永遠に平和なブルネイ)」そのものです。国教はイスラム教でアセアンの中では最も厳しいイスラム国家ですが、個人の信仰の自由は保証されています。シャイなのかのんびりしていて気がまわらないのか一見愛想がない人が多いように思えますが、会うたびにほのぼのと優しさが伝わってくるような人が多い印象があります。このセミナーでも主催者の担当者と立ち話をしていたところ、ダト・アダナン駐日大使のほうから握手の手を差し出してくださいました。
三重県ほどの大きさに人口が34万人ほどですので、国王がオーナー社長の大企業と考えても良いでしょう。ホテルのロビーや商店、オフィスなどには必ずと言っていいほど国王と王妃の写真が掲げられています。国民は王室の噂話をすることは禁じられているものの、上記のような生活を保証されているわけで文句を言えばバチがあたるというものです。一昨年、国王の長女のご一家とホテルで同じエレベーターに乗りあわせましたが、 1階で降りる私たちに「私どもは地階に行きますのでどうぞ。」と降りやすいように場所をお譲りくださいました。もっともその時は私たちが彼らがロイヤル・ファミリーだとは想像もしていませんでしたが。
この国で有名な日本企業があります。 T建設です。何とブルネイが独立する前から事業展開をスタートしており、以来大蔵省貨幣局や警察署、モスクなどの公共建物、ガドン地区の商業コンプレックスなど多くの実績を持っています。日本向けの LNGには総合商社が早くから駐在していますが、火力発電所建設、そしてメタノール・プラントと異なる商社が次々と進出しており、この国の発展を日本企業が地道に担っていることは確かで、同じ日本人として大きな誇りを持って良いと思います。人口が少ないうえに、在留邦人が 100人しかいないこの国に日本食レストランが約10軒もあるのは不思議ですが、あくせくしないでビジネスを続けていけるという良い証拠ではないでしょうか。
今回のセミナーでは観光業も対象に入っており、あらゆる賞を総なめにしている七つ星ホテルエンパイアホテルの担当者が日本人顔負けの日本語で紹介してくれ「皆様、生きてる間には必ず一度はお越しください。」の一言に会場が笑いに包まれました。私は 2度も見学に行き、写真を山ほど撮っていますが、南シナ海に面しジャック・ニクラウス設計のゴルフ場が併設された贅を尽くしたホテルです。プールが部屋にあるくらいでは驚いてはいけません。入り江かと思ったら屋外プールの一部だったり、トイレの中に豪華なソファがいくつも置いてある休憩室があったりです。
旅行ガイドブックにはブルネイはたいていマレーシアのおまけにちょこっとついていることが多く、地理や歴史的にはうなずけるのですが、私はシンガポールとのセットをおすすめします。ブルネイには日本から直行便がまだ就航していませんので、どこかで乗り換える必要があります。シンガポール・ドルとブルネイ・ドルは等価であるという条約があり、シンガポール・ドルはブルネイの中で堂々と通用します。ただし、ブルネイ・ドルはシンガポールでは使えません。シンガポールの乗り換え便の時間を調整すれば、半日以上シンガポールに滞在できますので空港の手荷物預かり所に手荷物を預け、シンガポールで観光やショッピングを楽しめるという按配です。シンガポールは空港から MRT(電車)を使えば、料金も安く乗り降りを繰り返して短時間で目的地をまわるというブルネイとはまた違う楽しさが味わえます。
河口容子

[163]南の島へのあこがれBIMP-EAGA

 読者の皆さんは BIMP-EAGAをご存知でしょうか。ビムピアーガ、最初の 4文字はブルネイ、インドネシア、マレーシア、フィリピンの国名の頭文字を取っており、後の 4文字はEast ASEAN Growth Area、つまり東アセアン成長地域という意味です。先日、東京でBIMP-EAGAへの投資セミナーが開催されました。
アセアン諸国は、政治体制、言語、民族、宗教、人口、面積と実に多様で、経済発展にもかなりばらつきがあります。今脚光を浴びているのは「大メコン経済圏」というベトナム、カンボジア、ラオス、ミャンマーというインドシナ 4ケ国にタイと中国をあわせたメコン川流域の開発です。
一方、 BIMP?EAGAはブルネイ(ボルネオ島にあります)、インドネシアのカリマンタン、マルク等、マレーシアのサバ、サラワク等、フィリピンのミンダナオ、パラワン等の島嶼地域で合計人口は約5,750万人、合計面積は約160万平方キロ(日本の4倍以上)です。1992年にフィリピンのラモス大統領により4ケ国により共同開発構想が提案されましたが、1990年代後半の経済危機により停滞し、2003年10月の首脳会議で運輸、観光、産業の 3分野を優先分野として再活性化することで合意されました。豊かな森林資源(域内の 60%が森林)、鉱物資源(石油、天然ガス)、漁業資源という自然の恵み豊かな地域で、農業が基礎産業(米、ココナッツ、パームオイル、ゴム等)です。大メコン経済圏を大陸のアセアンとするならば、 BIMP-EAGAは島のアセアンで、個人的には南の島への憧れからどうしても後者のほうに魅かれてしまいます。
 通常、国別ないしは一国の行政区分ごとに投資セミナーは行われますが、このセミナーは 4ケ国の政府担当者が講師として集まりました。アセアン諸国はその多様性ゆえに、EUのようにまとまらないと言われて来ましたが、BIMP-EAGA についてはテーマごとにリーダー国が決められており、運輸とインフラの開発はブルネイ、天然資源開発はインドネシア、観光開発はマレーシア、中小企業の育成はフィリピンとそれぞれの国の特徴を生かしたリーダーシップの下、多国籍チームで活動を行なっています。
 セミナーでは BIMP-EAGAに投資をした日本企業の経営者による講演もありました。多国籍展開をしている電子部品メーカーはマレーシアのクチン(サラワク州)に工場を作り、マレーシア人2,200人を雇用し、24時間操業を行なっています。女子サッカーチームがクチンで強いのがご自慢のようです。熱帯雨林と電子部品、ちょっと想像を超える組み合わせではありませんか?もう 1社、こちらは鹿児島県のさつま揚げと冷凍食品の会社ですが、安全な食を求めてミンダナオ島ダバオに会社を設立しました。この企業は地元との連帯と発展を願い、10年間で東京ドーム2000個分の植林を行なう計画です。
 日本国内ではあらゆる点でリスクを避けたがる傾向が目立ち、いかに楽をしてお金を稼ぐか、また拝金主義に満ち満ちています。それに比べ、まだ開発途上の地域で、工場を立ち上げるのは並大抵なことではありません。その勇気と努力に私は心から拍手を送ります。そして、熱帯雨林に癒される彼らを羨ましくもあります。
河口容子