[194]コ・ロカシオン(1)

私の海外生活の中で一番長く、5年半も住んだディジョンを離れようと思ったのは仕事に限界を感じたから。米国企業での勤務の厳しさは自分でも十分に分かっているつもりだったけど、一連の飛行機事故や疫病など渡航者の数が激減する事情が続き会社の期待する成績が出せず、また、私が思うような市場開拓に上司の了解が中々得れず、ビジネス文化の差に圧迫され、とうとう堪忍袋の緒が切れた。結局、会社からは自主退職を促され、精神的にもかなり参っていたので契約条件を盾に戦う事もなく辞めた。ずっと頭の中を過ぎっていた帰国、日本での再出発をするには良い機会かもしれないと思った。
帰国すると決めたら、シラク大統領と同じ射手座の私、すぐ行動に移る。まずはネットで帰国後の住居探し。家なき子の私にとって住居は大問題。アパートを借りるにも保証人とか、敷金、礼金、家具の買い揃えなどと問題は山積み。落ち込んで帰国するのにそんな更なる圧迫には耐えられない、だから「ルームシェア」を思いついた。学生の時も海外赴任の時も何度かアパートを一緒に借りて共同生活した経験があったので。毎日ネットで検索し、帰国後の東京での楽しい生活を想像するだけで不安が少しづつ和らげられて元気になって来た。


帰国する準備を着々にしていたはずの私が引っ越し先を東京からパリにしたのは、セーヌ川に係留する船を見たから。ワインが好きでフランスに来たけれど、今は船の虜になってしまった。船があるから帰れない。葡萄畑を見なくても平気だけど、船に乗れないのは恋人と別れるよりも辛い、せめて見るだけでも良い。私にとって船はべそをかいて帰る母の腕の中のようなもの。何度船会社に捨てられても、やっぱりしがみつきたい。
無理だと思っていた労働許可証の更新が出来たことが全てを一転させた。収集する「ルームシェア」の情報をを「コ・ロカシオン(仏語でル-ムシェア)」へと変えて、船が見えるパリにした。パリでの住居探しはとても大変だと聞いていたけど想像以上だった。決まるまでの1週間、私は毎晩ホテルの部屋でストレスから吐いていた。そして今、モンパルナスの近く住むフランス人男性のアパルトマンに同居人として住んでいる。そして再就職先の船会社も決まった。
ルームシェアサイト
(日本国内) http://roomshare.jp/
(フランス) http://www.appartager.com/
夢路とみこ
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