[06]何とかしなきゃ

2019年4月29日

夫の実家のある東北の街に引っ越してから、夫は休まず会社に行くようになり、しばらくして夜勤になった。私はとりあえず保険会社に身を置いてすれ違いの生活が始まった。といっても、研修が終わると営業活動に入るので午後4時頃までは自由の身。お昼時に会社訪問をする時もあったけど、時には朝のミーティングが終わると自宅に直行して貴重な夫婦の時間を楽しむこともあったっけ。
夫はアルバイトをネットで検索してた。使用済みの下着を売るとかでLサイズのヒップの私にMサイズのパンティが与えられたの。ちなみに1枚500円~1000円。ブラジャーが1枚1500円~2000円だったかな。使用後は袋にまとめて保存してた。
パンティに白いおりものがついてもそのまま。後日気になって匂いを嗅いでみたけど匂いは無かったよ。ある程度溜った所で買い主に郵送した。これに可愛い顔写真でも貼って売るのかしら。高校生なら制服姿だってお金になる。女という性は男にとって商品価値があるんだとつくづく思う。まぁ、そんなことは1回きりだったし、お小遣い程度だったと思うけど。
それから夫に頼まれたのはあるサイトのさくらのアルバイト。これは確認の電話があるからと私が登録することになったの。1件で150円。1万円から振込するという事だった。そのサイトを覗くと卑猥な世界を連想させる雰囲気で、いかにもメールでH出来ます、って感じ。登録の写真も用意してあって、胸元のみとか足のみとか選べるようになってた。男性は1回のメールで500円かかるようで、直メールして、ってなるから1人の人とは3回もてば良い方だったかな。誤って直メールしちゃった人がいて、その人とのメールが楽しくてバイトはそっちのけになっちゃった。
私は私なりに仕事探しをしてた。自宅のポストに投函された求人広告を見ていたらコンパニオンの仕事が目に入ったの。空いてる時間でいい、っていうのが気に入って早速登録した。保険会社が休みの土曜日と日曜日と祝日に少しでも稼げればと思って。
子供達は土曜日は保育所、日曜日と祝日の時は夫の実家で面倒を見て貰ったの。コンパニオンっていっても配膳も含まれていて、主に結婚披露宴の準備と後片づけが多かった。配膳は時給750円?でドリンクサービスをするコンパニオンの時は時給1200円?。夜の宴会は2000円?だったかな。コンパニオンは学生が多くて私にまわっってくるのは配膳ばっかりだったけど、披露宴の他に旅館の仲居さんのような仕事もあって色々学べたから良かったと思う。
アルバイト代としては月2?4回で1万?2万程。6月には保険会社を辞めて今の職場で働き始めたんだけどコンパニオンの仕事は月に2回位の割合で続けてた。就職は思ったより厳しかった。今勤めてる職場は立ち仕事だけどやっとこ入れたくらい。職安で自宅から歩ける範囲の会社は数少なくて、その数少ない事務職をあたったけど何日かすると面接の時に手渡した履歴書が郵送されて自宅のポストに納まってる。こうなったら職を選んではいられない、ってなって…。
4月に息子は入学式を迎え、娘達も自宅から徒歩5分程の保育所に預けられる事になった。ありがたかったのは3人目は保育料が無料だったこと。それでも月々の返済は利息を払うのがやっとこで完済の目処は全くたたなかった。払ったらすぐ引き出す、の繰り返しで自転車操業ってやつ。。思えばこれが消費者金融の罠にはまってたのかも。ピンチになるとどこかしらから職場に電話がかかってきて、「今度の審査の見直しで限度額が10万円上がります。お支払いは3000円増えますがよろしいでしょうか」と言ってきたんだよね。それをありがたい!なんて思ってしまってた。
何とかしなきゃ、と変なアルバイトをしてみたり休みなく働いても、収入は支払いに消え、わずかな生活費で細々と暮らす日々。それでも借金は減るどころか増えてるあり様。これが私だけのことならまだしも夫婦揃って借金を抱えてるんだからどうしようもない。家族が健康だからなんとかやっていけたんだと思う。
だけど、インフルエンザが流行った時、3歳だった真ん中の娘が入院することになってしまって今までのサイクルが狂ってしまった…。もう、限界?!
山口ひとみ