[054]遅刻3回欠勤1日
就業規則を見ますと欠勤や遅刻早退についての記述がされている場合があります。欠勤したときには賃金を支払わない旨や遅刻や早退をしたときの賃金の取扱いです。
就業規則によくある記述に「遅刻または早退を3回した場合には、1日欠勤したものとみなして、1日分の賃金を控除する」という規定がありますが、この規定は十分注意して使用しないと労働基準法に抵触する場合があります。
賃金は元来労働の対価として支払われるものですから、遅刻または早退によって労務の提供がなかった時間分の賃金は支給しなくても「ノーワーク・ノーペイ」の原則に基づき問題とされません。 しかしそこに「減給の制裁」としての要素があれば「労務提供がなされ、本来支給すべき賃金の一部を控除すること」にあたり、法の制限が加えられます。
(1)1事案(1件)に対する減給額は、平均賃金の1日分の半額を超えないこと。
(2)複数事案に対して減給する場合にも、一賃金支払期における賃金総額の10分の1を超えないこと。
例えば、遅刻が3回ありそのために労務提供がなされなかった時間が8時間とすれば、その遅刻3回を欠勤1日分とすることは問題ありません。
しかし、遅刻が10分程度の軽微なものであり、それが3回行なわれたとしても30分でしかありません。これを欠勤とすることは、「ノーワーク・ノーペイ」の原則を超えて「減給の制裁」にあたることになります。
その場合は、3回の遅刻が1回の欠勤になるという1事案の減給制裁になり、控除できる額の上限は「平均賃金の1日分の半額」つまり4時間分の賃金に相当します。
したがって遅刻した時間(不就労時間)の合計が4時間以上になる場合には、1日分(8時間分)の賃金をカットすることは差し支えありません。
しかし3回の遅刻の不就労時間が30分などという場合に1日分の賃金控除を行うと、減給の制裁として4時間を超える時間分の賃金、すなわち、平均賃金の1日分の半額を超える額に相当する賃金が控除されることになりますので、労働基準法に定める減給の制裁の制限に抵触することになります。
仮に1日の平均賃金が8,000円とすれば、遅刻3回30分の制裁として欠勤扱いはもちろん不可であり、さらにその件に関して4,000円を超えるカットはできないこととなります。
もし、このような軽微な遅刻に対して制裁を科すのであれば、
(1)遅刻または早退が3回以上になった場合には精皆勤手当を支給しない
(2)遅刻または早退は不就労時間として賃金を控除する
(3)遅刻または早退が3回以上になったときは、平均賃金の1日分の半額を控除する
などと定めるといいでしょう。
また、より厳しいものを就業規則で決めるなら「1回の遅刻に平均賃金の0.5日分を控除する」、「3回の遅刻で半日の欠勤とみなす」などと定めることもできます
労基法第91条:「就業規則で、労働者に対して減給の制裁を定める場合においては、その減給は、1回の額が平均賃金の1日分の半額を超え、総額が一賃金支払期における賃金の総額の10分の1を超えてはならない」