[096]セクハラあれこれ(1)防止措置義務化
職場における性的嫌がらせをセクシャルハラスメント(以下セクハラ)といいます。平成11年4月1日施行の改正男女雇用機会均等法は、事業主にセクハラ防止措置を講じなければならないことを義務づけました。(改正法第21条)
事業主が何らセクハラ防止措置を講じていない場合に、職場等でセクハラ行為が発生したときには、事業主にも管理責任があるものとされます。
まず事業主は会社の方針としてセクハラ防止の姿勢を明確にし、その周知・啓蒙に努める必要があります。具体的には就業規則等の服務規律条項や懲戒条項などでセクハラ防止規定を定めることなどがあげられます。
また、事業主はセクハラについて、相談・苦情へ対応のため苦情処理制度を設ける必要があります。
さらに職場においてセクハラ行為が生じた場合の事後の迅速かつ適切な対応策として、人事部門が直接事実関係の確認を行うなどの措置を必要としています。
この場合「職場」とは、労働者が業務を遂行する場所を指し、会社の施設内だけでなく、取引先の事務所や出張先、業務で使用する車中等をいいます。
◇対価型セクハラ
「対価型セクハラ」とは、職場の地位を利用し、性的関係強要しそれを拒否した女性社員を解雇するなど、性的言動に対する女性労働者の対応によってその女性労働者を解雇したり降格や減給などの不利益を負わせるような行為をいいます。
◇環境型セクハラ
「環境型セクハラ」とは、職場にヌードポスターなどを掲示し、女性労働者の就業意欲を低下させるなど、性的言動によって女性労働者の就業環境を不快にさせ女性労働者の就業に支障を生じさせるような行為をいいます。
事業主は、これらの「対価型セクハラ」と「環境型セクハラ」のいずれに対しても具体的な防止措置を講じなければなりません。
セクハラに対する法的責任は、均等法の配慮義務ではなく、実際には民法上の不法行為責任と債務不履行責任の所在を争うことになります。均等法の配慮義務を怠ってセクハラが起きた場合は、単なる義務違反というだけの話なのです。