[056]新卒派遣

2012年10月12日

 

厳しい時代を生き抜くため、企業では様々な取り組みが行なわれています。その中でもコスト管理は最優先に練り直しがされている部分ではないでしょうか。特に一番のネックとなるのが人件費。今までのような体制では時代に乗り遅れるという危機感から、費用対効果の高い人件費対策が練られているようです。
 
今までの年功序列の体制というのは、新卒学生を採用し、その後10数年間の教育期間を経て、企業戦士となり身を粉にして働き、その後第一線から退いても後は退職まで仕事場で悠々自適の毎日を送る、そんな図式でした。しかしそのような体制はバブルの崩壊で一変に崩れ、雇用にも新たな風が吹き込んでいます。
 
企業で一番ほしいのは即戦力となる人材。今までのように新卒学生を育てている暇は無い。新卒をとらず中途採用でほしい人材を確保する。合理的といえば合理的なやり方。しかし、すべての会社がそうなってしまったら、新卒学生の行き場が無くなり社会問題となってしまいます。実際大学は時代の対応に慌てています。今まで、ゆっくりと勉学にいそしんでいた学生が、学生時代から何かしらスキルを身に付けなければ採用されなくなってしまった。
 
大学当局も革新を迫られています。タダでさえ少子化の影響で新入生は少ない。ウチの大学に入れば企業で必要なスキルは実につくというようなウリが無ければならない。大学当局も学生もおちおちしていられない。大学が就職予備校となる、新たな時代の到来です。
 
そんな時代の申し子としてか、新卒派遣なる言葉が生まれています。新卒派遣とは、新卒学生が派遣社員となり、企業に派遣されること。新卒で正社員の道が無ければ派遣社員になるしかない、ということです。しかし、新卒派遣にも朗報があります。派遣社員が派遣先の企業に正社員として採用されることに道を開く「紹介予定派遣」が、12月1日から解禁されたのです。
 
企業としては使える人を採りたいという要求があり、また派遣社員のほうからすれば自分に合った会社で働きたいという要求があります。その橋渡しと生まれたのが「紹介予定派遣」。これは効果のある方式として欧米ではすでに定着した制度です。
 
新卒学生を採用しても実際に使えるかどうかはわかりません。それを見極めるには普通は試用期間を置きますが、試用期間というのは法律上はほとんど本採用と同じように拘束されます。不採用にするには解雇とほぼ同じ手続きが必要。しかし、派遣ならばそういうことはないので、企業にとっては気軽にほしい人材を見極めることができる制度でもあります。
 
派遣も結局は正社員になれない人の受け皿というのも淋しい限りですが、こういった雇用の変革の波を乗り越えた時点で、結局年功序列もみなおされまた元に戻るのではないかという気もします。
 
使える人材が今すぐほしいという気持ちはわかりますが、商品でも人材でも自社にあったものを育てるのも仕事なはず。流動的な人材にばかりに頼っていては、結局良い人材は他社にも流れる可能性があり、差別化にならない。忠誠を誓う日本ならではの流儀がここまで日本経済を成長させたことも忘れてはならないように思います。