[123]解雇あれこれ(-1-)整理解雇

【整理解雇】

事業主(使用者)の都合によってなされる解雇を整理解雇といいます。経営の逼迫により、その改善を目的として行なう場合が多い解雇です。使用者側からの一方的な解雇になるため、その取り扱いは慎重にしなければならず、法律でも大きく制限されています。

民法での扱い:

第一条で信義則や権利濫用の視点から解雇を制限しています。また無謀な解雇は同90条の公序良俗違反としてこれを制限しています。

労働基準法の扱い:

基準法は労働者に対して労働条件が不利益になるような取扱を禁止しています。これは解雇にも当てはまります。しかし全ての整理解雇を禁止しているわけではなく、以下の条件に照らして正当性があれば整理解雇は認められます。

1.解雇の必要性が本当にあるのか?
2.解雇回避のための努力を尽くしたか?
3.人選に感情が入っていないか?
4.説明・協議、納得を得るための十分な手順を踏んだか?

解雇の条件は就業規則や労働協約に記載されているのが常ですので、これらの定めに照らしてみることも大切です。要件が定めにあてはまらない場合は解雇できません。

いずれにせよ、解雇は30日前の解雇予告または30日分以上の解雇手当が必要ですが、整理解雇の場合は意外と好条件の場合が多いようです。

[122]退職金あれこれ(-7-)行方不明者に対する退職金

【行方不明者に対する退職金】

死亡退職金と違って行方不明者に対する退職金支払いはちょっと難しいものがあります。例えば夫が行方不明になったからといって、配偶者が退職届を出し退職金を請求したとしても、退職金は本人以外には支払えないので、配偶者に退職金を渡すことはできません。退職金は賃金ですから本人に直接渡すことが労働基準法で義務付けられているからです。(第24条。賃金は、通貨で、直接労働者に、その全額を支払わなければならない)

ただし例外もあり「解釈:昭和63年3,14基発150号」によれば賃金は使者に支払うことは差し支えないとされていますので、使者として認められる場合には、本人以外の者にも支払うことができます。しかし、本人が行方不明である場合には配偶者を本人の使者として認めることなどできませんので、やはり配偶者に退職金を支払うことはできないことになります。

しかしこれでは埒があきませんので、本人が行方不明となった場合には法務局などの供託所に退職金を供託する方法をとるのが普通です。退職金を法的に供託所に保管してもらい、後日本人が受けとれるようになったときに退職金を供託所から受領するという方法です。この方法により、会社は退職金を本人に支払ったものとみなされます。

通常行方不明者の扱いは民法の「不在者の財産管理人」の定めによる場合が多いです。これにより退職金を含めた行方不明者の財産について、一定の手続きによって配偶者が受領することができます。

管轄は家庭裁判所で、財産を残したまま住所または居所を去った者(不在者)に対して、不在者の親族や債権者などの請求によって財産の管理(処分)を行うことができることとされています。配偶者が生活費などを請求する場合には、この方法による事が多く、退職金の扱いも当然これに含まれます。

[121]退職金あれこれ(-6-)退職金の分割払い

【退職金の分割払い】

退職金は労働基準法第11条により通常の給料と同じく「賃金」にあたりますので同法第24条の「賃金全額払いの原則」が適用されます。

したがって原則的には分割払いは認められていません。ただし例外があります。

退職金を支給する場合は就業規則や退職金規程などに退職手当に関する事項について定めておかなければなりません。その場合に退職金の分割支給に関する定めを決めておけば、分割して支給することができます。

その定めですが、ただ単に「分割払いをすることがある」とか「分割払いも可とする」というような定めではだけで、「退職手当は退職の日から1ヶ月以内にその2分の1、6ヶ月以内に残りの支払う」などその分割する回数や支払期日を決めて就業規則や退職金規程に具体的に記述されていなければなりません。

退職金は多大な出費を企業に強いるため、分割払いを含めた年金制度を導入する企業が増えてきています。これは企業にとって退職金の支払い負担を平準化することができ、また税制上の優遇措置が適用されることなどのメリットがあげられます。労働者にとってみれば、老後の安定収入になるということ、外部の機関に原資を預けるので安全であるということができます。

なお、退職金について定めがない場合は、分割払いにするかどうかは使用者の自由です。

[120]退職金あれこれ(-5-) 退職金の減額

【退職金の減額】

社員が退職する場合、退職の理由によっては減額したい場合があります。たとえば退職した社員が競合他社に転職するような場合です。

この場合、退職金規程で減額する定めがとくに無い場合は、理由はどうあれ退職金を減額することはできません。退職金はあらかじめ決められた賃金であるとされ、ここに賃金全額払いの原則が適用されるからです。

そこで「競合他社へ転職する場合は退職金を減額する」と就業規則(退職金規程)に明記すれば、減額も原則認められることになります。この場合、退職金を減額するということは一種の制裁という意味があり、競合他社に転職することで自社に対して背任行為として明確にされている必要があります。

コンピュータ関連では転職によるキャリアアップが盛んになってきましたが、同じコンピュータ関連会社に転職することがわかったとしてもこれだけでは競合他社であるとは言い切れません。同じコンピュータ関連であり、同じような製品を開発しており、その社員が競合他社に転職することで自社に少なからぬ影響がでる可能性がある、など具体的である場合にのみ退職金の減額が認められます。

しかしこういう場合、退職金を減額するほどの重要な社員をみすみす取られる人事に問題ありと思ってしまうのですが。

なお、退職金制度がなく使用者のさじ加減で恩恵的に支給されている場合は減額できます、というか退職金制度が無いわけですから減額という議論がそもそも生じません。したがってこういう場合は競合他社へ転職する社員に退職金を不支給としても何ら問題とはなりません。

[119]退職金あれこれ(-4-)死亡退職金

【死亡退職金】

社員が死亡したときは当然退職になりますから、退職に関する規定がある場合はその規定に基づき退職金を支払わなければなりません。

その場合の支払い相手ですが、会社では就業規則の退職金規定で、死亡した場合の退職金の支払い先を指定できます。

死亡退職金は、1.就業規則(退職金規程)等で定められている場合はそれに従い、2.定めがない場合は、民法上の相続人に支払います。

労働協約や就業規則、退職金規程等で、死亡退職金を誰に支払うかについて定めている場合には、その定めに従います。通常は無難なところで配偶者を指定する場合が多いようです。

この場合、死亡退職金の支払い順序も民法の遺産相続人や労働基準法施行規則の遺族補償の順位どおりでなくても構いません。会社が任意に定める支給順位に基づいて支払って差し支えないのです。

退職金は民法上では相続対象の財産なのに、なぜ退職金規定で支払い先が決められるかというと、遺族の財産争いが起きた場合に、へたをするとその財産争いが決着するまでの間、会社はその退職金を預かっておかなくてはならなくなるからです。面倒な争いに巻き込まれず、さっさと支払って終わりにしたい。そんなニュアンスが含まれているようです。

しかしそれでも遺族の間で争いが起きて、訴訟事件になるなど係争がが長引きそうな場合は、実務上の処理として供託などの措置を講じます。そうすれば、死亡退職金を会社がいつまでも管理する必要もなくなります。

ところで、就業規則等で支給対象者を例えば「妻」と定めた場合には、受給権者たる妻は、遺産相続人としてでなく、直接これを自己固有の権利として取得することになります。つまり支払対象者を「妻」と定めているときは、その死亡労働者に妻がなくとも、たとえ民法上の相続人(例えば兄弟姉妹)が存在していても、その相続人は、死亡退職金の受給権を持つことはできないのです。

もちろんこれは支払対象者についての定めがある場合のみで、定めがない場合は「民法の一般原則による遺産相続人に支払う」とされています。

万一の時、残された人のために退職金規定を確かめてみてはいかがでしょう?
(第63号加筆修正版)