[023]身元保証

 

労働者を雇い入れる時に、使用者は身元保証人を要求するのが一般的です。保証を取る目的としては、労働者がもし会社に損害を与えた時にその賠償責任を問うものです。またその人物自体の身元を確認する目的もあります。
 
身元保証と金銭貸借の保証とはその金額が決定していないところに違いが有ります。したがって身元保証を引き受けたけど、どういう損害が起こるか判らない。ということで身元保証はその保証人を守る意味で法律が定められています。「身元保証に関する法律」がそれです。
 
特徴としては
 
・身元保証は相続しない
・保証期間は5年を限度とする(5年を越える部分は無効)
・保証期間を定めない場合は保証期間は3年とする
・契約の更新は可能
・保証契約内容に変更があった場合は、保証人に遅滞なく通知しなければ責任を問えなくなる
・通知された保証人はそれ以後の契約を解除できる
 
保証契約内容の変更とは、
 
・業務内容の変更
・勤務地の変更などがあり、労働者の保証を保証人が困難になった場合など
 
身元保証契約期間中に、労働者が会社の金を持ち逃げして消息を断った時などは会社は身元保証人に損害賠償を請求できます。保証人は損害を与えた労働者の消息がわかるときは本人に請求するように要求できますが、本人に弁済能力がないときや消息がわからないときは損害を賠償しなければなりません。
 
まあ、身元保証とはいえ保証人となったらリスクを背負うわけですから、押印する時は人物を良く確かめてから押印するようにしましょう。
 
 

[022]労働条件の明示

 

労働契約を締結するときはその契約内容を明示することが義務付けられています。
(労基法15条、労基法規則5条)
 
(1)就業の場所・従事する業務に関する事項
(2)始業・終業の時刻・休憩時間・休日・休暇・交代制に関する事項
(3)賃金の決定・計算・支払方法、時期・締切日に関する事項
(4)退職、解雇に関する事項
(5)労働契約に期間を定めた場合には、労働契約の期間に関する事項
 
以上、5項目に付いては【必ず書面で明示】しなければなりません。
 
(6)退職手当の定めが適用される労働者の範囲、退職手当の決定、計算・支払いの方法、退職手当の支払いの時期に関する事項
(7)臨時に支払われる賃金、賞与および最低賃金に関する事項
(8)労働者に負担させる食費・作業用品その他に関する事項
(9)安全・衛生に関する事項
(10)教育・研修等の訓練に関する事項
(11)災害補償、業務外の疾病扶助に関する事項
(12)表彰・制裁に関する事項
(13)休職に関する事項
(14)昇給に関する事項
 
以上6から14までは、就業規則に定めが有ったり慣行として行われている場合は【明示】しなければなりません。この場合は書面でも口頭でも構いませんが、後々のことを考えたら書面で明示しておいたほうがいいと思います。
 
労働契約は労働に関してどこまで規定されているかを決める重要な契約です。就業規則と共に十分に吟味し、不明な点は明確にしておく必要があります。問題が起きてから正すようでは、労使ともに心証が悪くなって職場に険悪な空気が流れないとも限りません。
 
特に(10)の「教育研修は勤務時間か?」とか(1)の「研修は昇給に関係するか?」はよく問題にされる事項です。また、罰金の多い職場は(12)に規定されているかどうかも吟味しなければなりません。

[021]労働契約の期間

 

労働契約の期間は
 
1)期間を定めた契約
2)期間を定めない契約
 
の二種類があることを前に述べました。注意すべきは期間を定めた契約で1年を超えるような契約は期間の定めのない契約とみなされます。(労基法第14条)
 
ここでは例外的に1年を超えた期間を認める契約についてお話します。
新商品、新役務、新技術の開発・研究に必要な高度の知識を有する労働者との契約。
事業の開始、転換、拡大、縮小等の業務で一定期間に完了するものに必要な専門の知識を有する労働者との契約。
満60歳以上の労働者との契約
 
以上の契約はその期間を3年とすることが出来ます。
 
ダム工事等に必要な労働者を雇い入れる場合は、その仕事が完了するまでの期間を労働契約期間とすることが出来ます。
 
ただし、1)、2)の場合引き続いて契約する時は3年の契約はできません。
 
労働契約の期間は通常は1年、長くても3年を超えることはできません。これは、労働者がその意思に反して労働を強いられないようにするために、労働契約に拘束される期間を限定したものです。

 

[020]労働契約

 

求人する事業主がいて、求職する労働者がいて、お互いの合意があってめでたく労働関係が成立します。つまり労働契約が成立したわけです。この場合、書面でなくても口頭でも契約は成立します。
 
さて、仕事を始めてみたはいいが、どうも話が違う。給料が思うようにもらえないので、社長に聞いてみたら、完全出来高制の請負契約だと言う。これは労働者にとって重要な問題です。
 
【労働契約と請負契約】
 
労働契約は、契約の形式にかかわらず、労働者がいてその労働を使用者が指揮監督して提供されている場合をいいます。指揮監督下にないものは労働契約ではなく、民法上の請負契約とされます。
たとえば、仕事を始める時間について、作業場に入る時間に遅れたとします。この場合「遅刻」となるならば、使用者の監督下にいると判断されます。また労務の提供が自由である場合も指揮監督下のもとであるとはいいがたく請負契約とされます。
請負契約であった時は、労働基準法の適用除外になるので注意を要します。
 
【禁止事項】
 
1)賠償予定の禁止
 
普通の契約書には契約不履行の場合の損害賠償額が明記されるのが当たり前ですが労働契約では労働者の負担になるとしてこれを禁止しています。ただし、損害賠償そのものを禁止するのではなく、賠償の予定が禁止されているだけです。したがって何か失敗をすれば損害賠償の責務はあります。(労基法第16条)
 
2)前借り金の相殺禁止
 
労働者に前貸し金がある場合、事業主はその労働者の賃金から貸し金を相殺してはいけないことになっています。(労基法第17条)
 
3)強制的な貯金の禁止
 
強制的な社内預金は禁止されています。社内預金をさせる場合は、所定の手続きを経なければなりません。(労基法第18条)

[019]試用期間

 

労働者を正式に採用する前に、3?6ヶ月程度ためしに試用することがあります。その間に社員としての適格性を判断します。不適格と判断された場合は本採用を拒否するものです。
 
しかし、いつでも拒否できるかというとそういうことは無く、拒否といえども労働契約の解除は解雇と同じですから、本採用の拒否には正当性を求められます。しかし、裁判所は試用期間中の解雇は、本採用後の解雇より広い裁量権を認めています。
 
試用期間中に判断される事項は次のようなものがあります。
 
1)勤務成績   5)協調性
2)勤務態度   6)提出書類の不備
3)健康状態
4)出勤率
 
このような事項に問題があれば、本採用の拒否が正当と認められます。
 
【試用期間の長さ】
 
いつまでも試用期間といって引っ張るのは民法90条の公序良俗違反となります。一般に試用期間は3ヶ月であり長くとも6ヶ月まででしょう。しかし、判例では1年の試用期間も無効とする判断はしていません。
 
尚、試用期間中の解雇でも、14日を超えて使用した場合は、通常の解雇と同じく、30日前の解雇予告か30日分の解雇予告手当てを支払わねばなりません。(労働基準法20条、21条)