平成13年12月に刑法に加えられた新しい刑罰がこれです。
第208条の2(危険運転致死傷罪)
今までは道路を運転している時に起きた事故について、死傷が生じた場合に適用された法律は業務上過失死傷罪(211条1項)でした。
しかし、それでは故意に危険な運転をした場合や飲酒運転などの悪質な原因も「業務上の過失?」という理不尽な部分があったのが現実です。これではおかしいということで、業務上過失(まちがい)ではなく、明らかに「故意」によるものという視点で制定されたものです。当然ながら業務上過失死傷罪より罰則は厳しくなっています。
【比較】
業務上過失致死傷罪(従来) 危険運転致死傷罪(新設)
死亡させた場合 5年以下の懲役 1年以上15年以下の有期懲役
負傷させた場合 5年以下の懲役 10年以下の懲役(情状あり)
危険運転致死傷罪が適用されるのは限定されており、四輪以上の車を運転するドライバーが、危険性が極めて高い、次の4つの運転行為で死傷事故を起こした場合のみです。
(1)アルコールや薬物(麻薬・睡眠薬など)の影響で正常な運転ができない状態で運転した場合
(2)ハンドル操作などを誤るようなスピードの出しすぎ、または無免許運転などの未熟な運転をしたとき
(3)人や車の通行を妨害しようとする目的で、割り込み・幅寄せ・あおり行為など異常な接近をする運転をしたとき
(4)赤信号などを完全に無視した運転をしたとき
つまり簡単に言えば飲酒運転、無謀運転、無免許運転、信号無視に対する罰則強化となります。
先日高速道路を走っていたら、ベンツが追い越し車線でもたもたしているクルマを煽っていました。なかなかどかないので業を煮やしたベンツは内側から追い抜き、追い越し車線に戻るや否や急ブレーキをかけたのです。もたもたしているクルマはあわや追突しそうになっていました。
このようなベンツの行為は明らかに不法行為であり、もしこれが原因で死亡事故を起こしてしまったら危険運転致死傷罪が適用されることになります。しかしこれで死亡事故が発生したら危険運転致死傷罪なんてものではなく殺意を持った殺人罪になると思うんですけどねぇ。
とにかく高速道路では熱くならず、冷静に運転するに越したことはありません。