[186]非喫煙者のマナー/乾 京子
私は喫煙者である。
喫煙者が喫煙マナーについて語るのは、煙草を吸わない人から見ればおかしな事かもしれない。
そして、私の喫煙マナーが良いと言いたい訳でもない。
ここ数年、急激に喫煙マナーが問われるようになり、時々過剰すぎるのではないかと思う時もある。
ただ、既に定められた事に逆らう気はない。
私鉄からは灰皿が撤去され、街からも灰皿の数はかなり減り、喫茶店やレストランでも吸えない所が多くなった。
それでもまだ不自由はない。
喫煙席を別に設けている喫茶店やレストランも多いからだ。
先日喫茶店の喫煙席に座り、煙草を吸い本を読んでいると、誰かが隣に座りいきなりゲホゲホと咳をし始めた。
ふと見ると40代から50代の女性がこちらを睨んでいる。
煙が行ってしまったのかと思い、火を着けたばかりの煙草を消そうと思ったとき、風向きとしてその女性の方へは全く煙が行かない事に気が付いた。
それでも女性は私を強く睨み付けながら、大袈裟に咳をする。
私は迷ったが、そのまま吸い続けることにした。
第一ここは喫煙席なのだ。
しかも後からわざわざ隣の喫煙席に座り、煙も行っていないのに咳をして睨む方がおかしい。
私の様子を見て、その後女性は店員へ禁煙席への移動をしきりに頼んでいた。
入ったときに禁煙席が満員だったというのならばまだ話はわかる。
だが、むしろ喫煙席の方が混んでいたのだ。
その女性の意向は理解し辛いが、喫煙者の全てが憎いのだろう。
そして、彼女はきっとこれから先もどこかで同じ嫌がらせをするに違いない。
煙草が体に良くない事も、他人に迷惑を掛けることも分かっている。
だから妊婦さんや子供の前では吸わないし、吸わない人の方へは煙が行かない様に注意している。
喫煙者が偉いとは勿論思わないが、吸わない人が偉いとも思わない。
以前私が勤めたある会社で、社長が禁煙を始めたから社内の喫煙所を全て撤去する、という発言があった時にはゾッとした。
私の働いていた部署は8階で、ビルを出ても灰皿はなく、携帯灰皿も使用不可とまで言われたからだ。
喫煙者にしか分からないかもしれないが、煙草はリラックスしたり、ストレス解消に役立っている。
この二つは特殊な例だが、煙草を吸わない人にもマナーが必要なのではないかと思う時がある。
乾 京子