[132]だんな
昔、飲食店をやっていたときの事。お客がお勘定するときに、よく「ご主人!お愛想!」などといわれたものです。ところがお客の中には食事をした後、「ところで旦那さん・・・」と切り出す人もいます。なになに?と話を聞けばなんだ、商品の売り込みだったりするんですねぇ。
「ご主人」は単にその店の主を指していいますが、「旦那」はこのように何か買ってほしい時、つまりお金を払ってほしいときに「だんな」さんが登場するようです。
旦那(だんな)とは、もとは古代インドの仏教用語「ダーナパティ」が語源。この言葉はのちに西洋にも伝わり「マダム」の語源となったとも言われています。なんと女性を表す言葉になったのですね。
また「旦那」は「檀那」ともいわれ、その意味はお布施をする人です。日本では「施主」とか「檀家」とかいう意味で、寺に金銭などを寄進するありがたい人が「檀那」です。お布施をする人ですから本来男女は問いません。だんな⇒マダムが女性であることは不思議ではないのです。でも日本では「檀那」は男に限られているようです。
「檀那」はお布施をする人ですから、敬い言葉です。お客やご主人を「だんな」と呼ぶのはある意味で正しいですね。経済的に援助を受ける点では「スポンサー」、「パトロン」などと同様の意味もあります。奥さんが自分の夫を「だんな」というのは経済的援助を得て敬っている時に使うのです。そう思っていない人は「だんな」様は使ってはいけませんよ?
ところで遊郭でも「旦那」は経済的に援助する人をいいます。芸妓や舞妓と男女関係を持ち、経済的に支援する男性が「旦那」です。舞妓さんが初めて旦那を持つことを「水揚げ」といいますが。昔はこの「旦那」になることが世の男性の夢だといわれたようですが、昔と違って今は身売りはできませんから、条件は経済的のみ。世知辛い現代で旦那になることは昔以上に大変なことのです