[137]村八分

村八分とは、その地域の中(主に村落)で特定の住民に対して諸事付き合いを絶つことで加える制裁をいいます。いわゆる仲間はずれですが、記録では江戸時代から昭和初期にかけて行われていたとあるようですが、人間の根源ともいえる所業であることから実際にはもっと前から行なわれていたと思われます。また最近でも「昭和初期まで」ではなく、現在もなお行なわれているところもあるとききます。

村落にはそれぞれ独特の慣習や掟があり、それにそむいた人や家族に対して住民が申しあわせて行なう陰険な制裁が「村八分」ですが「村十分」でないところが日本的といえましょう。つまり十の行事のうち火事と葬式は付き合うのです。もっとも、火事を出したら仲間割れどころではないでしょうし、当人が死亡したらそれで制裁もお仕舞いということになりましょう。

村八分にする理由もあります。貧しい村落が生き残っていくためには、その規律を守っていかなければなりません。存続のための制裁ならば、単なる意地悪と言い切ることはできません。郷に入っては郷に従えと古人も言っているように、生きて行くための暗黙のルールがあったでしょう。それを冒すことは犯罪であり村落としては制裁せざるを得なかったという事情もあったことと思います。

ちなみに、付き合いを拒否した村八分とは「冠」「婚」「建築」「病気」「水害」「旅」「出産」「年回忌」を指します。「冠」とは元服のことで今でいえば成人式のことです。

ところで、現代社会において村八分をしたらどうなるか?これは明らかに基本的人権を侵す行為として、憲法違反になります。よくあるのが町内会の「回覧版を回さない」とか「出したごみを収集されず残された」とかの意地悪の数々。

町内会というのは任意の地域自治会ですが、現代社会においては「強制加入団体に準ずる公的な団体」とされており、加入しないのは勝手ですが、加入を拒むことはできないとされています。町内会は基本的な生活の場であり、日本国内においては、最低限の文化的生活を憲法で保障しているからにほかなりません。

今尚残る村八分の現状を把握し、つまらぬ意地悪は極力排除するよう気をつけたいものです。