[110]拱手

これは「こうしゅ」と読みます。よく漫画や時代劇などの場面で、辮髪ナマズヒゲの中国人が「xxアルヨ」などと言うせりふをいい、腕を円くしてその中に頭を入れるお辞儀をするのをみることがあります。あの腕を円くする仕草をを「拱手」といいます。正確には、右袖口から左手先を入れ、左袖口から右手先を入れ、そうしてできた腕の輪を前につき出してその中に頭を入れるものです。拱手して頭を入れるお辞儀は、中国では最敬礼にあたります。

ところで、欧米では「お辞儀をせず握手をする」というのが通念となっていますがこれは正しくありません。もっとも広い欧米を「欧米」というくくりで論じること自体間違いなのですが。

ヨーロッパでは通常はよく握手をしますが少し改まった席ではよくお辞儀をします。ですから、ヨーロッパで日本式にお辞儀をするのはちっともおかしくなく恥ずかしいことでもなく、むしろ丁寧なことなのです。ですから、ヨーロッパに行ったならどんどんお辞儀をしましょう。

アメリカではどうか。アメリカではヨーロッパほどお辞儀はしません。もっぱら握手です。ですが、ここでも日本式にお辞儀をしてはいけないこともないでしょう。相手に礼を尽くすの意味のお辞儀はその振る舞いで相手に伝わるものです。むしろ丁寧なお辞儀をアメリカ人に教えてやる、くらいの意気込みでいいと思いますよ。

ところで、ヨーロッパには面白いジンクスがあって、階段を登っている時、あるいは降りているときは途中でやめないということです。ゴミが落ちていても、忘れ物を思い出しても途中で引き返すことをしません。階段を上りきってからおもむろに引きかえすのです。

従って、階段での挨拶もあまりしません。登りきってからあるいは降りきってから挨拶をします。ま、階段の途中での挨拶は危険でもありますから、やむをえない時を除いてあまりしないほうが無難といえます。