[076]ハザードランプの使い方
最近、クルマを運転していて思うのですが、ハザードランプを挨拶代わりに使うことが多いですね。ですがハザードランプは本来非常用であるからそのような使い方はマズイのでは?というような意見もあるようです。事の是非は別にして、チカチカと挨拶されると気持ち良いですし、その場の雰囲気も和みます。今日はそのハザードランプを挨拶に使っても良いのか?というハナシをしたいと思います。
ハザードランプというのはクルマについている非常点滅灯の事で、黄色のランプがチカチカ点滅するアレです。このハザードランプは昔はハンドルの横の方についていて非常に使いにくい(誤って作動しない様にわざと操作しにくいようになっていた)場所にありましたが、何年か前からインパネの中央に位置するようになり、手軽にサインとして使われるようになってきました。挨拶のほか高速道路の前方渋滞の合図に使ったりすることもあります。
ではまず、ハザードランプは何のためにあるのか、というところから話をします。ハザードランプは車両運行上の保安部品に定められていて、これが装備され正常に動作しないと車検がとおりません。つまり装備を義務付けられています。ということは、ある条件下ではハザードランプを点けなければ違反になるということが考えられます。違反にならないのなら装備する必要はないわけですから。
まず、道路交通法の第52条を見てみます。ここに、車両等は夜間道路にあるときは、政令で定めるところにより、前照灯、車幅灯、尾灯その他の灯火をつけなければならない、とあります。ここで、非常点滅灯(ハザードランプ)はその他の灯火ですから夜間使用するものだということがわかります。
そして、それを使うときですが、道路交通法施行令第18条に「夜間、道路(歩道又は路側帯と車道の区別のある道路においては、車道)の幅員が五・五メートル以上の道路に停車し、又は駐車しているときは、車両の保安基準に関する規定により設けられる非常点滅表示燈又は尾燈をつけなければならない」とあります。
つまり、ハザードランプは夜間の停車駐車に使わなければならないものであるということがわかりました。昼間は使う必要はないわけです。(第二十六条の三の2には通園通学バスについての規定があり、園児の乗降の際には点灯しなければならないとされています。)
では、それを目的外に使っていいのかという問題ですが、これはその行為によって危険が発生しないならばなんら問題ないとされています。つまり警察では本来の目的以外に使ったからといってそれをとがめるようなことはしないし、それを取り締まる条文も無いと言う事です。
したがって、本来夜間に使うハザードランプですが、昼間の停車時に使っても構わないし、挨拶代わりに使っても別段かまわないということです。
ちなみに、警音器(クラクション、警笛、ホーン)の場合は目的外に使ってはならないという条文があります(第五十四条第二項)。とすると、クラクションはあいさつ代わりに使ってはいけないということになります。
私自身は、合図や挨拶にハザードランプを使っても一向に構わないと思います。それによって通行がスムーズになり安全が確保されるならどんどん使うべきとも思います。
しかし、ハザードランプで挨拶をするのが当たり前になってしまうと、今度はそれをしなかったといってクレームをつける人が現れたりします。現にそれが原因で喧嘩になった例があると聞きます。もしそれで殺人事件になったりすると新たに法令が定められるかもしれません。
ハザードランプは緊急時に使うべきもので、それ以外に使うと本来の使うべきときに効果がなくなるという意見もわかります。欧米ではハザードランプは緊急時にしか使いません。反対論者は欧米の例を引き合いに出すことが多い。
しかし「欧米はこうだから日本でもこうあるべきだ」というのはちょっと短絡過ぎます。欧米には欧米なりの土壌があり、日本には日本ならではの土壌があります。むしろハザードランプを挨拶に使うというのは欧米人には思いもつかない日本人の美徳ではないでしょうか?
道路交通法に「ハザードランプは本来の目的以外に使ってはならない」なんて不粋な条文が加わらないことを祈ります。
今回のコラムは茨城県警水戸警察署にご意見をいただき、参考とさせていただきました。この場を借りて御礼申し上げます。