[082]正直者が得をする社会

●今日は「たまごやライター」の河口容子さんのコラムでお届けします。

■正直者が得をする社会

 どんなに世の中が変わろうと許せないのは「正直者が損をする社会」、そして「親切があだになるような取引先や人」です。意地悪かも知れませんが、私は時々相手がどういう対応をするかをチェックすることがあります。

 会社員の頃です。職場にある取引先から同じお菓子がお中元として2回届けられました。取引先がデパートの外商に出したリストに重複して記載されていたか、デパートの手配ミスでしょう。「ミスをしたのは相手なのだからそのままいただいておこう。」という部下を押しとどめ、「いつかは誰かが発見するはず、それまで黙ってもらっていたと思われるのは企業の信頼にかかわる。」と私は言いました。

 デパートの外商にまず電話を入れ、調査をするように依頼しました。ここでのチェック・ポイントはまずこのデパートの担当者がきちんと調査をするかどうかです。繁忙期でもあり「数千円のお菓子1箱くらいで面倒だ。」と思うかも知れません。小1時間ほどたって、取引先の秘書役から電話が入りました。「私どものリスト作成に手落ちがございましていお恥ずかしい限りでございます。ご丁寧にご連絡を下さるとはさずが○○社様でございます。ありがとうございました。よろしければそのまま皆様でお召し上がりくださいませ。」というものでした。

 次は最近の例です。私の零細企業でもオフィス用品の通販を利用しています。文房具が割引価格で買え、買いに行く手間暇も省けるで大助かりです。いつも少量多品種の発注なのですが、間違った商品が入っていることはありません。ところが、その日に限って間違ったファイルが入っていました。サイズは同じなので別にこれでもいいと思い、念のためカタログを調べたところ私の発注したものより44円高い商品でした。これも黙ってもらったところでその会社の損失は44円で、コストからすると対応の手間隙の方がばからしいかも知れません。ただ、私はミスがあることを伝えた方が今後のミス防止にはつながるし、44 円といえども薄利多売な業界で黙ってもらうのは失礼と思いカスタマー・サービスへ電話をしました。

 ファイルは間違っていたけれど不具合はないのでそのまま使うこと、価格は高い方へ修正して請求してほしいと伝えたところ、担当の女性は「誤った商品をお届けして申し訳ありませんでした。明日私が発注された商品を責任を持ってお届けするようにいたします。本日届いたものはよろしければそのままお使いください。」というかえって申し訳ないような対応でした。

 上のふたつの例は、私の正直さに見事に応えてくれた企業であり、業績もすばらしいだけに企業にとって「顧客に対する細かい配慮、真摯な姿勢」がいかに大切かを教えてくれる材料となっています。逆に同じようなけースでも踏んだり蹴ったり、電話をした事を後悔させられるような思いをした企業も多々ありますが、長い目で見ると衰退していくケースが多いようです。

 企業のみならず、対人関係も同じです。現在は金銭だけで「勝ち組、負け組」と分けていますが、正直者を平気で踏みにじるような企業や人はいくらお金があっても「負け組」と言える世の中を作っていきたいものです。

河口容子

求人ニュースで日本がわかる!
第27号正直者が得をする社会(2001.04.13)