月別アーカイブ: 2005年2月

[03]これからの披露宴<その1>

第3回

これからの披露宴<その1>

今、テレビから流れるラテンのリズムに、私は思わず踊りたくなり、一人ステップを踏みからだを揺らしている。モントリオールのジャズフェスタの中継があっています。サルサという映画をみて鳥肌が立つ思いがして以来、私の体の中に何かラテンの血でも流れているのかと思うほど。楽しい気分です。恋する男の気持ちを歌った、切なくも、ロマンチックな大人の世界、人間が本来持っている情熱。喜び。ここにありという気がします。結婚式の披露宴で歌や踊りで祝う気持ちも原点はこんなところにあるのではないかとふと思いました。

「愛は名もなきもの、尽きぬ思いは一人の女へ」という歌詞です。そんな思いが実り、よかったねとみんなで祝うもの。日本人は形式を重んじるので、まだまだ決まりきったスタイルの披露宴がおこなわれていますが、これからは、、パーティ形式で何の決まりもなく歌いたければ自由に歌い、ついでに嬉しいからみなで踊るというような結婚報告お披露目のパーティを気軽にやれるようになればいいなと思います。

それでも、やはり、人が集まれば進行係りは必要です。そんな時、司会者が決まりきったせりふで仕切ってしまったらムードは大なしですね。時と場所、状況をわきまえて、変身するくらいの気持ちが必要です。式場の司会者として長年勤めて、披露宴の出し物に関してお話をするなら、ばかげたもの、感動的なもの、楽しめるもの、いろいろありますがこの順序で多かったようです。両家のバランスがかなり違った場合それは、一目瞭然。列席者のほうがはずかしくなります。

クラシックを聞いて育ち、ピアノを習い高学歴の新婦。ご両親の招いたご来賓はかなりの方々。一方、新郎は工事現場で働く、その会社の仲間が全員出席で、酒とカラオケ大好き。どうやって披露宴を盛り上げようかと、宴芸用の衣装をもって来て、大さわぎ。それをばかばかしいとは決して思いませんが、せめてお二人にはこうなることがわかっていたはず。二人がお互いに恥を欠かせないように話し合い譲り合うこと、打ち合わせのときに、会場の担当者がアドバイスをすべきかもしれません。

ベテラン司会者といえども、さりげなく流すことしかできませんでした。多くの人を義理で集めるよりも、少人数でも、かけがえのない大切な人たちに包まれて、いつもより少しおめかしをして、おいしいお料理を皆でいただく。少なくとも列席者全員に二人から、挨拶をして、祝いの言葉をかけていただく。その席が祝いのお酒で、楽しい気分になったら、歌や踊りが出て、なごり惜しいほどに楽しい席となる。

今私が考える理想的な披露宴はお二人らしい、お二人で考えた結婚式と披露宴です。そんな手作り披露宴の準備の仕方を次回は具体的にお話したいと思います。

2005.02.28

[02]要注意人物

第2回

要注意人物

地方の婚礼では、300人程の列席者があり、歌や出し物でとてもにぎやかです。そんな婚礼司会の担当を私は、長年務めている。もちろん、決まりきったナレーションでは務まらない。何が起きても臨機応変にアドリブでフォローは当たり前。

最近は地方でもオリジナル婚が増えてきました。それでも、事前に打ち合わせに行くこともなく、FAXで資料をいただく。当日、片道車で2時間の会場へ到着。挙式が終わった頃、披露宴の始まる30分前に初めて、新郎新婦とご対面。

できるだけ安心していただくために、質問攻めにしたり、詳しくは聞きません。10分程度で、名前、肩書き、進行、祝電に関してのみ、手早く確認。その会話の中で、お二人の人となりや、家族構成、なれそめなどをつかんでいる。あとはゆっくり楽しんでくださいねと頼もしさをアピールするのです。

そんな会場の担当者から、今度の披露宴は新婦のお母さんと、あの議員さんは要注意人物だから気をつけてくださいと電話があった。少し、いやな気分だが、そこは、プロ。逆にそんな人を喜ばせてかえしてやろうと、ファイトが沸いてきた。

案の定、当日、控え室前の廊下で担当者と新婦の母がもめていた。なんと衣装が和装洋装4点の他に、留袖を作ったので持ってきたというのです。

列席者に対してお色直しばかりでお待たせするのは悪いし、全体的に時間配分も変わってきます。困った顔をした私にそんなに困るならいいよ。と逆切れ。

司会者ができないと言っていると。会場中ふれまわり、ぷんぷん怒った顔。私はすぐに美容師とお色直しにかかる時間を相談。プログラムのどこで出入りをするか、そして音楽を決めた。できるだけ、余興を新婦の退席中にも盛り上げ、走り回った。お母さんに声をかけながら、余興の内容で勝負した。

要注意の議員にも声をかけてみた。なんども私の婚礼に参加した事があるらしく、ご機嫌で歌を歌った。

そんな要注意人物とすべての人が、ご機嫌で帰っていただくことは、司会者として、当たり前の仕事なのです。

私も結構、筋の通らないことが嫌いで、さまざまな人間を見て、悔しい思いをすることがあるが、プロは何があろうと、お金をいただいている以上責任を果たさなければいけないのです。

また、どんなに娘の婚礼で気が張っていても、会場側から要注意人物といわれないようにするのもマナーかもしれません。

2005.02.28