第2回
要注意人物
地方の婚礼では、300人程の列席者があり、歌や出し物でとてもにぎやかです。そんな婚礼司会の担当を私は、長年務めている。もちろん、決まりきったナレーションでは務まらない。何が起きても臨機応変にアドリブでフォローは当たり前。
最近は地方でもオリジナル婚が増えてきました。それでも、事前に打ち合わせに行くこともなく、FAXで資料をいただく。当日、片道車で2時間の会場へ到着。挙式が終わった頃、披露宴の始まる30分前に初めて、新郎新婦とご対面。
できるだけ安心していただくために、質問攻めにしたり、詳しくは聞きません。10分程度で、名前、肩書き、進行、祝電に関してのみ、手早く確認。その会話の中で、お二人の人となりや、家族構成、なれそめなどをつかんでいる。あとはゆっくり楽しんでくださいねと頼もしさをアピールするのです。
そんな会場の担当者から、今度の披露宴は新婦のお母さんと、あの議員さんは要注意人物だから気をつけてくださいと電話があった。少し、いやな気分だが、そこは、プロ。逆にそんな人を喜ばせてかえしてやろうと、ファイトが沸いてきた。
案の定、当日、控え室前の廊下で担当者と新婦の母がもめていた。なんと衣装が和装洋装4点の他に、留袖を作ったので持ってきたというのです。
列席者に対してお色直しばかりでお待たせするのは悪いし、全体的に時間配分も変わってきます。困った顔をした私にそんなに困るならいいよ。と逆切れ。
司会者ができないと言っていると。会場中ふれまわり、ぷんぷん怒った顔。私はすぐに美容師とお色直しにかかる時間を相談。プログラムのどこで出入りをするか、そして音楽を決めた。できるだけ、余興を新婦の退席中にも盛り上げ、走り回った。お母さんに声をかけながら、余興の内容で勝負した。
要注意の議員にも声をかけてみた。なんども私の婚礼に参加した事があるらしく、ご機嫌で歌を歌った。
そんな要注意人物とすべての人が、ご機嫌で帰っていただくことは、司会者として、当たり前の仕事なのです。
私も結構、筋の通らないことが嫌いで、さまざまな人間を見て、悔しい思いをすることがあるが、プロは何があろうと、お金をいただいている以上責任を果たさなければいけないのです。
また、どんなに娘の婚礼で気が張っていても、会場側から要注意人物といわれないようにするのもマナーかもしれません。
2005.02.28