第9回-重度の方の死

2018年8月26日

こんばんは、稲垣尚美です。最近96歳の女性が、亡くなりました。寝たきりでした。こちらの言うことも聞こえているのかどうかわからず呼びかけに対しても何の反応もここ一年、ありませんでした。自分で体を動かすこともできず、声もうめき声くらいしか出すことができません。半年くらい前から鼻からのチューブから経管栄養だけに頼ってみえました。

痰も多く職員は、タイマーを持って20分おきに吸引に走ります。24時間、20分おきの吸引でした。それが半年以上続いていました。「20分おきに吸引されてたら、眠る暇ないよね」と、誰かが言ってその通りだと、みんな思いましたが、吸引しないと窒息です。

半年前の秋にご家族が、「旅行に行きたいけど、もしものことがあったら帰ってこなければいけないから、やめた方がいいだろうか」と相談されました。そんないつ亡くなってもおかしくない状態から半年間、よくもったと思います。

吸引されれば苦しいだろうし、鼻腔栄養は、食事を楽しむなんてものじゃないし、常に酸素は、必要な状態で生きるってなんだろうって彼女をみていて思いました。本人は、こんな状態で生きていたいのか、一番、聞いてみたかったです。同じ状態の方が、他にも何人かみえますが、その方達をみていて生きるってなんだろうっていつも疑問に思っていました。

この間、読んだ本でいつも他人に与えるばかりで何も決して受け取ろうとしない女性が、事故にあって植物状態になって4年間のちに亡くなったということがあったそうです。事故に遭う直前にその女性は、娘さんに「もし自分が、植物状態になるようなことがあったら管をはずしてほしい」と頼まれたそうです。何か感が、働いたのでしょうね。その娘さんは、お母さんに言われたことで悩んだけれど結局、するべきことを最後までしてもらったということでお母さんの意志に背いたと思い、悩まれたそうです。その時に神様から「お母さんは、与えるばかりで受け取ろうとしなかったから最後の4年間で人生のバランスをとったんだ」と言われて悟ったという話が、ありました。

私は、特に宗教を信仰してないのですが、そういう考え方をすれば、納得がいくかなと思いました。彼女達は、人に貢献することの多い人生だったからいま、バランスをとっているんだと。

2002.04.12