第11回-近所の人

2018年8月26日

こんにちは、稲垣尚美です。まだ、4月なのにつつじや藤が、満開です。5月のお出かけにつつじ見学を予定しているのに咲いていてくれるかどうか、心配です。もしかすると紫陽花見学になるかもしれませんね。

私の家の近くに小さな畑があり、毎日そこで老夫婦が、畑仕事をしてみえました。小さな畑には、いつも色とりどりの花や何種類かの野菜が、作られており、2人で老後を楽しんでいるという感じでした。おじいさんは、体の大きな元気な人でおばあさんは、腰が曲がっていて小柄な人でした。

私は、毎日そこを通るので「こんにちは」とあいさつをしてました。でも、返事があるのは、おじいさんの方だけでおばあさんには、無視をされていました。おばあさんには、嫌われているのかと寂しく思っていました。(特に嫌われるようなことをした記憶は、ないのですが)

ある時期から、そこの畑から老夫婦の姿が、みえなくなりました。近所の噂では、おじいさんが病気で入院していておばあさんは、看病しているとか。畑は、手入れしてくれる人もいないので荒れてきました。

何ヶ月かして、そのおじいさんが、亡くなったという話を聞きました。その家は、おじいさんとおばあさんの2人暮しです。おばあさんは、どうなるのかなと思っているとうちの施設に入所してみえました。状態は、介護度でいうと要支援状態だったのですが、まだ介護保険導入前だったので入所できました。

そのおばあさんに嫌われていると思っていた私は、少し抵抗がありましたが、普通に声をかけてあげることができました。「おじいさんが、亡くなって大変でしたね」すると私の顔をみて、とてもうれしそうにしてみえます。ただ、私の言っていることがわからないようで耳に手をあてられました。そこで初めて気がつきました。このおばあさんは、とても耳が遠いんだということに。

畑で無視をされていたのは、わざとではなく私の声が、聞こえてなかったと、この時わかりました。

話してみると気さくでステキなおばあさんでした。同室の人達や面会にみえる人達に「私の近所の人ですよ。よくしてくれますよ。」と紹介してくれたりします。この方が、入所されてからこの方から人の悪口を言っているのを聞いたことがありません。

おじいさんと気楽な2人暮しから一転して窮屈な施設暮らしにかわってしまったけど、私個人としては、入所してきてくれてありがとうって言いたい気持ちです。

2002.04.28