第10回 疥癬(2)~カンファレンス~
永礼盟です。
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一度疥癬の疑いが出た物の、検査結果がマイナスだった事から、職員全員がホッとしていたところでした。そこに入院中の御入居、Mさんが疥癬に感染していると病院から連絡が入ります。私自身、これが何を意味するのか、よく解っていなかったと言うのが本音です。しかし、病院は、疥癬の感染経路は、ホーム内であると言うことを叩きつけてきました。
以前、疥癬の検査を受けた方が何人かいらっしゃいましたが、全員疥癬の疑いはないと診断されました。しかし、病院で疥癬に感染していると診断された方がいると言うことで、もう一度ホーム側で疑わしい人を検査することになりました。
1名の感染者が居るという結果でした。誰が感染経路なのだろうか?あの人が、退院したときではないか?そう言えば、あの人がデイサービスから帰ってきてから痒みを訴えることが多くなった。そんな、責任逃れのような発言が何度も繰り返されました。その時、職員全員が疥癬対応未経験で、何の知識もなかったのが実状でした。
そこで、会社側から元看護婦の責任者や、アドバイザー等をホームに配置することを通知してきました。そこで疥癬対応についてのカンファレンスが行われます。
疥癬には、軽度の物と重度の物があり、我々が直面した疥癬はまだ軽度の物であるとのことでした。軽度が普通の疥癬であるとするなら、重度の方はノルウェー疥癬と呼ばれます。何が違うかと言えば、同じヒゼンダニが肌に寄生することは変わらないそうですが、ノルウェー疥癬の場合、もともと何らかの基礎疾患があって、それに合併する形で発症するそうです。普通の疥癬の場合、多くても1,000匹程度のヒゼンダニが寄生するのに対し、ノルウェー疥癬の場合は、100~200万匹にも達するといわれます。
そんな疥癬知識を教えられ、どのような対応をするかを習っていきました。大事なのは、清潔です。毎日の掃除とシーツ交換を命じられました。それと、晴れた日の、布団の天日干し。1日数回の着替え。洗濯物が出た場合は、黒いビニール袋に密封して24時間以上置いてからの洗濯。疥癬に効く軟膏の塗布。
それらを職員で行うことを義務付けられました。正直、この時の人数でその対応が出来るか?と言えば、とても難しい事でした。しかし、未知なる対応に取り組もうと、職員全員が一致団結し、疥癬対応に取り組む事を誓いました。
M様のご家族の要望は、帰ホームするときには、疥癬が撲滅してなくては困るので、二度と疥癬を再発させない対応をして欲しい。と言う物でした。およそ一ヶ月、疥癬対応は行われ、皮膚科からもう対応はいらないでしょうと診断がくだった。
その後、ホーム全部にダニ用の殺虫剤を散布し、疥癬は撲滅したかに見えました。
そして、M様が帰ホームされます。しかし根深い悪夢は、まだまだ撲滅されてはいなかったのです。
2003.04.25
永礼盟