第17回 スタッフを困らせるYさん(4)~破壊行動~
こんにちわ、永礼盟です。ご購読ありがとうございます。
Yさんは私に、何を訴えたかったのでしょうか?毎日、毎日、嫌がらせと思えるような行動が続きました。しかし、私に対するその行動は無くなったように感じました。その変わり、夜勤者にターゲットは変わったようでした。
日中、以前のような行動が少なくなったように思います。トイレにお連れすれば、トイレで排泄をして下さるし、嫌がらせのような事はなくなりました。
Yさんは、リハビリにとても意欲をお持ちで、入浴介助の時に少し心が通じた感がありました。お風呂が大好きで、毎日のように、「俺今日は、お風呂の日だよね?」そう、スタッフに問いかけます。Yさんの入浴日を把握してないスタッフは、一日中Yさんにお風呂入れてよコールに悩まされるのです。
私は、入浴介助が大好きなのです。そもそも私自身がお風呂好きで、そのリラックスした雰囲気が自分にはかけがえのない物です。
普段話せないことを、入浴の場では話をすることが出来ました。Yさんと、女性の話で盛り上がったことがあります。なんとYさん、千人切りの経験をお持ちだそうです。よくアオカンもしたと聞きました。私が、「なぜアオカンなのですか?」と尋ねると、ホテル代が、勿体なかったからだと教えてくれました。ごもっともな意見のような、そうでないような、それでも得意気に女性経験を語るYさんと、少しだけ距離が近くなった気がしました。
昼の顔と夜の顔。Yさんの行動は、夜になるとエスカレートし始めたように思います。昼間は、職員が3~5名ほどいます。ナースコールを鳴らしたところで、全員が対応してくれるわけではありません。日勤の職員も、Yさんの行動になれてきて、声かけだけで対応し、本当の欲求の時を見分ける対応をし出しました。今までは、欲求全てを受け入れて来ようとしました。しかし、それでは1日Yさんだけに掛かり切りになってしまいます。いったん受け止めて、後で対応する方法で対処したのです。
良かったのは、Yさん対応で業務がおろそかになることが無くなったと言うこと。悪かったのは、Yさんのストレスが溜まってしまったことでした。
本当に、一日中欲求を口にしている方で、「散歩に連れてけよ!」そう訴えられると、だれか連れてい?くれる人を見つけるまでずっと「散歩に連れてって!」を連呼しています。しかし、職員全員が同じ対応をするので、スキが無くなったのでしょう。自分のわがままを、わがまま通りに欲求できなくなった事を、夜勤者に発散するようになったのです。
夜勤者は、1人です。夜の職員は、1人しかいないのです。他には、管理人も施設長も守衛をいません。夜勤者1人だけで、ホームを見るのです。
我がホームの夜勤は、徘徊する人が居るので、結構大変です。対して大きくない施設を見回ると、2~3人の入居者様とすれ違います。各居室をノックして回る方、鏡に向かって自分と喧嘩している方、トイレのゴミ箱に排尿している方、夜はまた違った顔を見せるのです。
夜間のオムツ交換。徘徊者の対応。朝食の準備。そこにYさんのナースコールが来ると、何も出来なくなってしまうのです。ナースコールでの訴えは、だいたいが起こしてくれという物でした。夜勤者が起こして、車いすにトランスすると、Yさんの行動が始まります。
何をすれば、夜勤者が一番困るか?それは、業務を止めること。昼間に訴えを聞いて貰えない欲求は、ここで発散されるようになりました。エレベーターの管理会社へ通じる警報ボタンを押して、警備員を呼んでしまう。他の居室が荒らされる。職員の持ち物が盗まれる。夜勤者が困ると言うことなら何でもあれという感じでした。
日勤帯では、大人しくし、夜になるとそのストレスを発散する。そのような行動が毎日続いたようです。大声を出して、他の入居者を威嚇し、トイレに入っている人が居たら電気を消してしまう。まるで、小学生の頃に、相手にしてもらいたくてやってしまう悪戯のようでした。
しかし、ある朝出社すると、窓ガラスが割られていました。Yさんが、自分のパンチで割ってしまったようです。だんだん、Yさんの行動がおかしくなっていきました。薄ら笑いを浮かべ、女性職員に対して性的嫌がらせをするようになったり、物を壊したり、他の御入居を威嚇したり、だんだんエスカレートし始めたように思います。
破壊行動。女性職員に対する性的悪戯。他の入居者様への威嚇。Yさんの本当の訴えは、どこにあるのでしょうか?
2003.06.20
永礼盟