【第9回】有料老人ホーム実態編(5)

2019年3月18日

今年の夏は本当に暑い日が続く。老人ホームの食事についてお話をすると予告させていただいたが、まず、読者の方からのご相談を受けてみようと思う。

メールの概要は「御年、85歳を過ぎた義母ですが、ただいま入院中です。リハビリをいやがります。わがまま言い放題、このままでは寝たきりになりそうです。正直言って自分の母親が去年亡くなった時は、すごく哀しかったです。ここだけの話ですが、妻の自分勝手な母親で、それなりの年齢なんで、もういいのではとも思います。月々のかかりのこともありますし。。。考え込む日々です。どうするのが一番いいでしょうか。-悩める男性55歳」

わかりました。「即答します!義理の母様だから愛のむちは要りません。その方の思うようにされるのが一番だと思います。ベタベタに甘やかすのが一番ですね。平均寿命すぎているから、好きにさせてあげるのが一番いいでしょうね。我侭を言いたいんですよね。それでリハビリできなくてかたまってもしかたがないでしょう。」我ながらほれぼれする名答である。また別件の相談があるが、次回にお答えすることにする。

で、今回の話題である食事について、お話しよう。今、病院も施設も食費については実費いただくことになっている。その一方で、保険からの給付や加算も伸びないから、直営ではなくて厨房そのものを委託する方式が増えている。建築構想ができた時点ですでに委託の契約がはじまり、建物設計段階にはちゃんと厨房機器を入れるコスト計算に入っている。

よく設計段階で漏れるのは保温保冷式の運搬車の入るエレベーターの奥行きである。通常マンションや施設のエレベーターは、扉があいた正面に小さな鍵のかかった収納スペースがあるのに気がついておられる方はいるであろうか。これは、一般にはストレッチャーか、棺桶がつかえないように運搬するためである。座位のとれない利用者の移動にストレッチャーはかかせないし、棺桶を斜めにたてて出棺などはとんでも話しになろう。まだの方は次回のった際は必ず確認してほしい。

病院はもともとストレッチャー2台は入る構造になっているが、業務用のそれと一般がのるそれを2種類配置しているところが多い。某大学附属病院は、1種類のエレベーターで業務用も一般用も兼用している。結果、奥行きがストレッチャー2台は入る奥行きはあるが天井に保温保冷車があたってしまい、いまだ旧型配膳車しか導入できていない施設になってしまっている。

で、暖かいものをアツアツに、冷たいものを冷たく提供するのを、適時適温給食と考えるのが普通であろう。が、食事介助をする立場からいうと、アツアツのから揚げをフウフウしてさますのはけっこう手間隙がいることであるし、舌の動きや飲み込む機能が低下している場合、口腔内や食道の粘膜のやけどになる可能性さえあるのである。

「鼻水すすっているようなぬるくて薄い汁物やお茶!」と、施設の飲み物を称した亡き父には悪いが、介護や看護の理論によると適温の汁物とは、フウフウして飲む物を必ずしも指していない。食事の前や間食の時間帯と考えられる午前10時と、午後3時、3度の食前と1日最低5回の配茶サービスは通常どこの施設でも行われている。

この配茶は、薬を飲むための水がわりにも利用されることが多いから、日本茶のようなカフェインの多いお茶は使われない上にまことにぬるいのが良心的といえるのである。考えてみれば、アツアツのけんちん汁をひっくりかえしてしまって、衣服にかかるようなことがあれば低温やけどになるかもしれないのである。

で、話がずいぶんとんでしまったが厨房を請け負った業者はグループ会社が経営する給食会社に厨房で実際働く人材も派遣して儲けにしている。介護食の基本ともいえる、高齢者も好きなお粥はどのようにつくるか、ご存知だろうか?通常は5分粥というのは、1.5倍の水で米を炊く。つまり生米から炊くのがお粥のつくり方としてはポピュラーだが一番多く眼にしたのは、炊いたご飯にポットからお湯をそそぎ入れて少しガス台にかけて、ひと煮立ちして蓋付きのお茶碗に入れている場面である。くどいようだが、これはお粥でもお茶漬けでもないのは明白だろう。

2005.09.18