[32]なぜ子供を産まないか?(下)

2018年8月25日

前回のあらすじ
前回では少子化について語った。その内容を要約すると・・・
・少子化の原因として女性の社会進出、高学歴化など言われているがそれだけが少子化の原因ではない。
・少子化の要因として女性を中心に対応策が語られるが、男性にも少子化の要因がある。
・20代、30代の男性の男性の年収は減少傾向にあり、そのために結婚ができないワーキングプアと呼ばれる人々がいる。
今回はもっと少子化の本質を掘り下げて議論したい。
前号では年収300万円どころか100万円台の人間もいるワーキングプアと呼ばれる男たちがいることを説明した。俺もそのうちの一人だが、彼らには妻や子供を養う余裕も無いのだから結婚も簡単にできるわけがない。この男性たちも悲劇だが女性も同じように悲劇だ。ある女性誌が行ったアンケートではこんなデータがある。
首都圏で25歳から35歳の全ての独身男性で年収600万円以上ある人はなんとたった3.5パーセントしかいない。結婚するには愛が必要だが、愛を潤わせるには豊かさが必要だ。当然この3.5パーセントは競争過多状態になり多くの女性たちをあぶれさせてしまう。かつて30代独身女性の事を「負け犬」と呼ぶブームがあったが、それを象徴するように女性の方も結婚が難しくなっている。
少子化の要因が若者層の収入低下にある事をすでに説明した。しかし、少子化と同時に必ずセットになっているのが社会の高齢化なのだ。社会が高齢化が進めばどうなるか?単純に言えば社会の扶養者が増えるということだ。扶養者ということは働けない子供や障害者と同じ事だ。国家のすねかじりと言ってもいい。「すねかじり」という言い方に不快感を覚える人は少なくないだろう。「老人でも働いて社会に貢献している人は多い」と反論もあるだろう。
でも、老人が若者と同じ仕事ができるだろうか?工事現場や老人施設のような所謂3Kの仕事はコストが安い若者が多く従事している。老人の仕事はコストパフォーマンスが悪いものが殆どだ。国勢調査の統計でも高齢者の職業の4分の1が農林業。つまり補助金漬けで納税にも寄与していない。仕事をしているように見せかけてその内実は非効率極まりない?最もたちの悪い「すねかじり」だ。しかも、後期高齢者(75歳以上)の高齢者になれば労働率は10パーセント以下。川崎市が統計を出しているので参考にして欲しい。
http://www.city.kawasaki.jp/20/20tokei/home/kokuchou/17kokucho/h17jinko2/h17jinko2-7.htm
さてここからがこのメールマガジンの肝だが、結論からはっきり述べよう。この問題は世代間闘争に他ならない。少子化を回復したければ、若者たちが自ら立ち上がり戦って中高年や老人から既得権を剥奪しなければいけない。
少子化の要因は中高年と老人を保護するために若者が搾取されている現実にある。財産状況を見ればそれは明らかだ。総務省の全国消費実態調査2004によれば30歳未満で500万円以下なのに40代から1000万を超え、50代からでは1500万、60代からではなんと2000万を越える資産を保有している。老人はただでさえ豊かなのにこれに年金や医療でも優遇されている。最近「宙に浮いた年金」が話題になっているが、若者にとって年金は国家によるねずみ講に他ならない。
将来今の若者が老人になっても年金が払われる可能性はゼロに等しい。社会保障給付においても高齢者への給付が7割以上なのに少子化対策予算はたった3.7パーセントしかない。今話題の後期(長寿)高齢者医療制度にしても、介護保険にしても若者の収めた税金や社会保険料が使われているのだ。全ての老人が金持ちと言うわけではないが、やはり平均値が他の世代と比べても高すぎる。資産がピークに達するのが老人で死ぬときなんて日本ぐらいだ。日本だけ先進国で群を抜いて少子化が進むのも当然だろう。
やはり中高年や老人層から既得権を剥奪しないと若者は幸せになれないし、少子化もとまらない。今の現状では労働量が最も多い若者が低い報酬に甘んじ、労働量が少ない中高年、老年層がが最も多い報酬に与っている。こんな成果と反比例するような報酬分配ではなく「働いただけより貰える」という自然な配分にすれば簡単に少子化は回復するだろう。
「日本はGDPに比べて社会保障費の割合が低い。社会保障費を増やすべきだ」という意見もあるが、現時点の財政状況では現実的ではない上、逆に考えればそれは官僚社会の肥大化を意味する。財政を圧迫する官僚社会の肥大化と腐敗を改革するのも少子化改善への間接的なアプローチだが、官僚機構を牛耳っているのは誰か?やはり中高年だ。日本社会は中高年と老人が若者を収奪する構造なのだ。
最後に言っておきたい。中高年の人々がこのメルマガを読めば気分を害することは間違いないだろう。しかし、若者を救うことは自分たちをも救うことだとわかって欲しい。現在の少子化を防ぐことは将来の老人層を助ける若者層を増やすことなのだ。
老人たちに言うべきことはない。現在の老人たちの行動には閉口することが多い。既得権の剥奪には程遠い後期(長寿)高齢者医療制度にも「長生きしてはダメなのか?」と声高に抵抗する。一体何を言わんかやだ。現在の社会情勢を考えたら、また若者の将来を考えたら反対などできないはずだ。あれでは「自分たちが死んだ後の社会など知ったことじゃない」と言っているに等しい。
エル・ドマドール