[55]転職

2018年8月25日

今回は転職について語ろう。
このメルマガの読者には福祉業界の関係者が多いだろう。読者の中には転職の経験がある方もいるだろう。そしてこれから転職をしようと考えている人もいるに違いない。そこで何度も転職している俺からアドバイスをしたい。
(1)来年卒業の新卒者へ
俺も自分のやりがいは福祉だけだと信じていた。しかし、少し世間を知るようになって世界は広く自分の可能性は他の分野でもあったと今思う。もし○クルー○が行っているような職業適性検査で「貴方は福祉向きです」などと結果が出ても信じてはならない。福祉に向いている人間など誰もいない。そんなもの施設で障害者やボケ老人に殴られたことが無い人間が作ったものだ。君の可能性を伸ばしてくれるのは福祉だけではない。福祉は本当に稼げないし、社会不適合者の産廃処理場だ。将来性もない。リーマンブラザーズやAIGの株を買うようなものだ。そんなところで生活保護並の赤貧に苦しみ、人格も荒廃させるなら他の業界に行きなさい。内定が貰っている福祉法人や福祉系会社には断りをいれ、福祉就職フェアの冊子は古紙回収に出そう。
(2)初めて転職する人へ
なぜ転職したいのか俺にはよくわかる。無理解な幹部、上司、利用者やその家族。同僚との確執。人間関係もさることながら肉体的にも精神的にも限界なのだろう。もし福祉以外の業界に行くならさっさと辞表を提出しよう。しかし、もし同じ福祉系ならちょっと考え直せ。ましてや現在常勤で雇われているならなおさら考え直すべきだ。同じ福祉にいる限り組織が変われば、自分の不満が解消されると思うなら勘違いもいいところだ。また2,3年後にハローワークに行きたくなるのがオチだ。それとこれは福祉界では顕著だが、福祉業界は同じ福祉経験者の転職者を異様に嫌う。その忌避振りはまるで前科者に対する扱いと大差ない。まあ施設自体刑務所みたいなものだから仕方ないかもしれない。また面接で常勤で雇うと言われても安心はできない。常勤と言う条件で採用されてもいざ働くときには非常勤だった例もある。福祉の常識は社会の非常識なのを忘れてはならない。
(3)他業種から福祉へ転職する人へ
基本的には(1)と同じだ。福祉なら「優しさ」や「人間同士の触れ合い」「やりがい」があるとか思うなら幻想もいいところだ。福祉で働けば君は人間のもっとも醜いところを見て、やがて君自身が醜いところを晒すようになる。福祉のお世話になる人の多くは元々他人と上手くやっていけない、社会不適合の素養がある。つまり単なる嫌な人間が多いということだ。そんな彼らでも一見さんにはいい顔をしたがる。一緒にすごす時間が長い職員には本性を隠せないが。何も知らない一般人は24時間テレビの募金活動にでも応募して、にわか福祉に参加した気分になっていたほうが幸せだろう。
(4)すでに何度も福祉業界を転職している人。
君はいろんな施設を経験して、それなりに多様な技術や知識、経験を身に付け全能感に浸っているだろう。今度こそ自分の能力を正当に評価してもらえるところを見つけると息巻いているに違いない。しかし、真実を言うと、俺もそうだが君は福祉のキャリアが長すぎて他の業界へ転進への足枷になっているのだ。そしてもう一つ真実を明かすが、君のキャリアを本当に正当に評価するところなどどこにも無い。先ほども述べたが、施設にとって同じ業界の転職者は前科者同然だ。多種多様な福祉の文化を知っていることは現場では大きなアドバンテージだが施設幹部にとっては安定した都合のいいヒエラルキーを脅かす存在でしかない。(施設がどうして同じ福祉分野の転職者を忌み嫌うのか?そのメンタリティを理解するのは一般の人には少し難しい。また機会があれば説明しよう。)
勿論ベテランの君はそのことは十分承知だろうからどうしても転職するのなら止めやしない。ただ一つ言っておくが履歴書の職歴を改ざんするのは止めた方がいい。そんなことをしても社会保険を請求したときに全てばれるぞ。経歴の改ざんは十分な解雇事由になる。
*総括
いろんなケースで説明したがいずれにしても「福祉へ来るな」というのが俺の主張だ。福祉業界はもう業界関係者なら知っているが、かなり転職率が高い。俺が約10年前、初めてこの業界に入った頃の事だ。今と違い理想に燃えてとある施設に入所してきたが、その内情は「福祉」などと程遠いものだった。特に外に出られない利用者の苦難に付け込み、市場よりも高い品物を売りつける「施設内販売」は最悪のシロモノだった。このことは8号の「モラルよ、さらば」に詳しく書いてあるので興味があるなら参照にして欲しい。
同じように疑問に感じる人は多かったのだろう。辞める職員が本当に多かった。20数人の職員がいたが、次々と職員が入れ替わる。ある時、数えてみるとなんと1年間に18人退職していたのだ。1年間に4割の職員がいなくなるのは他の会社ではそう無いだろう。言っておくがこの施設には派遣も非常勤もいないのだ。しかも1997,8年と言えば未曾有の不景気で完全な買い手市場だった。1年間にこれだけ辞めるというのは驚愕だろうが、どこの福祉施設や会社も似たようなものであることを強調しておく。
統計もこのことを照明している。少し俺の体験したケースよりも低いが、42号「福祉を辞める時」で採用された数字を引用しよう。1年間に辞める介護職正社員は35.2パーセント。3年間だと79.2パーセントになる。3年で残るのはわずか2割、しかも正社員でだ。やはり他の職種と比べても異様過ぎる。これだけ辞められるろくでもない職場環境しか提供できないくせして、多くの福祉施設や会社は同じ福祉業界の転職者を冷遇する。救いようの無いうぬぼれとしか言いようが無い。やはり福祉はお勧めできない。
エル・ドマドール
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