第28回 経管胃ろう(3)~ノルウェー級~
こんにちわ。永礼盟です。ご購読有り難うございます。
「こりゃあ、酷い」杉山さんの皮膚を見たドクターが言います。普段は、「唾をつけときゃ治るよ」ヒゼンダニが見つかってもそう発言するような先生だったのに、今回杉山さんを診てもらったときに、そうおっしゃられたのです。
2~3カ所から皮膚を採取し、顕微鏡で見るとそこから何百匹のヒゼンダニの成虫、幼虫、卵、孵化しかけた卵が見つかったそうです。先生は、「ノルウェーまでは行かないが、かなり重度の疥癬である」と診断されました。
軍手をとると、指の先が真っ白になっています。乾燥肌なんかでは、なかったのです。経管胃ろうと、経験の浅い我々職員と言う問題があり、意識が疥癬まで向かなかったのかも知れません。本当に、胃ろうを成し遂げられるのだろうか?そこばかりに着目していた気がします。
退院時の看護サマリーを見ると、確かに入院中に疥癬に感染しているとあります。しかし、完治していると記されているので、なんの疑いも無かったというのが本当のところです。良く見ると、感染してから1週間~2週間程で完治しているとありました。治療方法も、610ハップ浴を数回行ったとだけあり、軟膏塗布等の処置がされていないようでした。ホームに帰ってくるときも、疥癬に関する最終検査を怠っていたようでした。
疥癬という病気は、責任の所在で醜い争いが見られます。感染経路がどこからなのかの擦り合いがされるのです。最初、我がホームで疥癬が出たときも、病院からなのか、元々ホームで感染していたのかを言い合っていた気がします。しかし、今回の事は、間違えなく確信的に退院させていると、ホーム側からクレームを出したようです。
病院で、状態が良くなったり、悪くなったりしていて、これが恐らく最後の良い状態であろうから。と言うことでの退院です。考えると、とても深いことのような気がしてなりません。間違えないことは、これから我々が対応して行かなくてはならないことでした。
直ぐに対応方法が検討されます。あれだけ苦労して撲滅させた疥癬が、我がホームに再び猛威をふるいそうです。退院して数日は、杉山さんを素手でケアし、ガウンも何も着用せず、そのまま他のケアにも参加していました。すでに、他の入居者様への感染が懸念されました。また1からやり直しです。
経管胃ろうだけでも大変だと思っていたのに、そこに加えノルウェー級の疥癬の発覚で、職員全員肩を落としました。勿論、職員だけではなく杉山さんに関係する人全員がこの状況を恨めしく思ったはずです。しかし、やらなくてはならない。
また、数ヶ月間、疥癬と闘って行くことになりました。
2003.09.14
永礼盟