[007]気がつけば華人社会の住人

最近、香港の企業グループの中の1社のジャパン・オフィスの代表をも兼任することになりました。香港人の特性で友達の友達は友達みたいな感じで私のまわりに香港人が集まるようになり、皆が皆仕事を頼んで行くため手に負えなくなり、もともとクライアントであった上記の会社に業務を集中させ、組織化したい、と知人である企業グループのオーナーに言ったところ、ではジャパン・オフィスの代表者になるように、と言われたわけです。
「クリエィティブで実際的な方法の構築」「勝つか負けるかというようなビジネスではなくそれぞれの自己責任の上に立つ共存共栄」という私と同じビジネス哲学を持つオーナーであり、何でも自分でやってみないと気がすまないところから、土日も深夜まで仕事をするというビジネススタイルに至るまでレベルは違うものの共感する部分があって何の不安もなくお引き受けしました。このグループは香港と広州に本拠を置いていますが、後で考えると10社ほどあるこのグループに日本人は一人もおらず、私も中国語など一言も話せないのに気づき、他人様から見れば勇気のいる事なのかも知れないと思ったりもします。


かくして、私も華人社会の住人になり、外との交渉は日本語、内輪は英語という世界も持つことになったわけです。株式会社の代表取締役と外資系企業のジャパンオフィス代表だなんて分不相応もいいところです。香港は中国に返還されたから中国ではないの?華僑なんて変じゃないの?と思われる方もあるかも知れませんが、香港と中国は違う制度で運営されています。たとえば、パスポートも香港人は別です。香港人が本土へは自由に入れるのに比べ、本土から香港へ来るには海外旅行扱いです。ビジネスマンたちにしても本土で幅をきかせている上海人と香港人は仲が悪いと聞きます。
もともと東南アジアに広がる華人(華僑とは本土から渡った1世をさし、その地で生まれ育った2以降の中国系の人は通常華人と呼びます。)ビジネスマンに知人友人の多い私は、現地では華人社会の中で仕事をしており、現地在住の日本人にお目にかかることもまずありません。彼らは財閥を除けばファミリー・ビジネスもしくは中小企業が多く、完全なオーナー支配のトップダウン経営です。決断が早く、自らがきりきりと仕事をし、体裁はかまわず、採算マインドがしっかりしているという点など、私が起業をするにあたっては華人のスタイルがお手本になったと言っても過言ではありません。
24年いた総合商社のノウハウを華人ネットワークに結びつけてみたい、そんな壮大な実験の始まりです。今月末から香港と広州に出張しますので、次回はそのレポートです。お楽しみに。
河口容子