[140]模倣品と闘う

 香港と中国市場に日本製の消費財を輸出し始めて丸3年になります。よく日本人から「日本の高い商品が中国で売れるのですか」と聞かれます。日本製、あるいは中国製であっても日本企画であり、それが中国人消費者にとって価値を持つ商品なら日本の小売価格より高くても問題はありません。ご存知かも知れませんが年収 2千万円以上の人口は日本よりも多いのです。また、社会構造も違います。女性もほとんどが仕事を持っていますし、男女同一賃金です。住と食はぜいたくをしなければ、日本に比べればとんでもなく安く、可処分所得が非常に高いのです。ただし、どんな商品にも飛びつく時代は去りつつあり、輸入品を買える層は高いものならインターナショナル・ブランド、それらに比べて日本製品はお買い得感があれば買う、といった状況になっている気がします。
 一番の問題は価格ではなく模倣品対策です。中国では軽工業品なら 2-3ケ月もすれば模倣品が出て来ます。ある日本の企業に「御社の商品を中国向けに出荷してほしい」とお願いしたことがありましたが、「中国に輸出すると模倣品が出て来るから」という理由で断られました。私自身はこの見解は時代遅れと思います。日本で展示会に出展したり、日本市場に出回っている限り、その商品情報は誰でも取れるわけです。日本でも「知る人ぞ知る」程度の商品であったりするのにちゃっかり中国で大量に模倣品が安値で出回っていたりするので、中国人のほうが商品選択眼はすぐれているかも知れないと腹がたつのを通り越して妙に感心することすらあります。最近は中国の一流百貨店やショッピング・モールでは「真正品」である証明書を日本のメーカーに求めるなどして模倣品対策をしているようです。
 こんな例もあります。日本のキャラクター・グッズですが、中国の委託工場で生産をしています。日本の展示会で香港・中国からの引合がふえて来るようになったので本格的に中国市場での販売を考え始めました。ところが中国市場にその製品はすでに出回っていました。日本企業は中国工場からの横流しを防ぐために生産した商品はその都度全量日本に輸入しています。また、日本でも誰もが知っているというほどのキャラクターではないので、わざわざ模倣品を作るメーカーがいるとは考えにくい。おそらく、生産管理は日本企業と工場の間に専門商社が入って行なっているため、材料の管理などがきちんとできておらず、工場が勝手に生産して中国国内に出荷していたものと思われます。また、中国の委託工場がだまって商標権を登録しているケースも耳にします。日本企業はコストダウンばかり考えず、知的財産権も忘れず考慮することです。その名のとおり財産であり、権利を主張するならば守る義務もあるはずです。
 先日、中国の消費者の模倣品に対するアンケート結果の記事を見ましたが、模倣品は困ると答えたトップは「薬品」「化粧品」でした。「化粧品」は何だニセモノか、でもすむかも知れませんが、「薬品」とはおそろしい限りです。一方、模倣品でもかまわない商品に「CD」や「ビデオ」「DVD」がありました。これらの海賊版はいわば庶民の楽しみ、厳しく規制すれば暴動が起きるとの説もあり、経済発展の影の部分を見る思いがします。
河口容子