[249]ラフィダ節炸裂

 毎年ラフィダ・アジズ国際通商産業大臣をリーダーとするマレーシア貿易・投資ミッションが極東ツアーの一環として日本にやって来ます。昨年は東京で開催されませんでしたので 2年ぶりに某ホテルで開催されたセミナーに出席しました。
 さすが閣僚がミッション・リーダーというだけあって官民60名ほどのメンバーからなり、事務局が非常に入念な準備をしているのにいつも感心します。複数の機関からご案内をいただくのですが、参加申込を行なうと東京の事務局であるマレーシア工業開発庁東京事務所から書面(封書)で申込の御礼が来ます。東京だけで数百名の参加者だと思いますので大変な事務作業だと推察します。この集客力はやはり主催者がいかにきちんとした後援団体を集め、チームワークで告知をするかにかかっています。
 そして当日の資料が充実していること。もともとマレーシアはパッケージ・デザインなどに非常に優れているお国柄だけあって、政府機関が出している刊行物のデザインも洗練されています。紙も分厚くて高級感があります。ミッション・メンバーのリストブックが実に良くできていてメンバー全員の顔写真に連絡先、所属する機関や企業の概要、各地でのプログラムにちょっとした統計数値までついています。小さな手帖くらいの大きさですが、記念品をいただいたような気分になります。
 日本の経産相の挨拶があるのもこのセミナーの特徴ですが、私が参加しただけでも平沼、中川、甘利と大臣は変わってきており、ラフィダ大臣の在職20年というキャリアはいかに有能かつパワフルな女性であるかを物語っています。日本人の講師が彼女を「マレーシアのセールスレディ」と評しましたが、ジョークを飛ばしながら、決してキレイ事は言わないのに憎めない、これは実務能力と経験に裏打ちされた自信のなせる技でしょう。彼女の歴史はマレーシアの産業の歴史でもあり、女性の社会進出の歴史でもあるような気がします。残念ながら最近の日本の女性閣僚には彼女ほど迫力のある人は見当たりません。
 マレーシアは投資先として政治、経済、社会が安定しており、エネルギーコストが安い、ハイテク産業が多く、サポート体制が整備されている、英語のスキルが高いというメリットがあります。また、生活環境もアセアンの中では快適です。昨年は日本からの投資が復活、すでに投資している企業の多角化、R&D 、物流などに再投資がすすんでいるそうです。
 マレーシアには外国人を対象とするいわゆるロング・ステイ・ビザがあります。現在11,000人の外国人がこの「マイ・セカンド・ホーム・プログラム」を利用しているものの、日本人はまだ 440人だけです。ラフィダ大臣いわく「マレーシアにはアジアがあります。マレー人、インド人、中国人など多くの民族が共生し、活力の源となっています。中国も日本もアジアではありません。シンガポールみたいな小さいところもアジアではありません。」とまさにラフィダ節炸裂。おまけに「私の泊まっているホテルの 1泊分でマレーシアに 4泊できますよ。航空運賃も入れてね。マレーシアのホテルは本当に安いの。安かろう悪かろうじゃなくて、中味も良いんです。皆さん来てくださいね。」
 このセミナーの最後に独立行政法人中小企業基盤機構とマレーシア中小企業開発公社(SMIDEC)との協力関係構築に関する覚書締結調印式がありました。今後は日本の中小企業からの投資や中小企業どうしの技術、販売、人材育成などにおける提携に注力したいという事ですが、単なる情報交換や助成金の管理窓口で終わってしまわないよう二国の中小企業の相互発展のために真摯に取り組んでくれることを期待しつつ私は会場を後にしました。
河口容子
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