先週号「中国の輸出規制策と日本の中小企業」の文末で触れたメコン地域投資促進セミナーに行って来ました。メコン 5ケ国、カンボジア、ラオス、ミャンマー、タイ、ベトナムの外相がパネリストとしてそろって登場、歓迎挨拶は高村外相というものです。寒のさなか朝 9時からの開始にもかかわらず大盛況で、たまたま某大手商社の部長と隣り合わせました。私がベトナムに行く機会が多いと話すと「ひとつわからないことがあるのですが、どうしてベトナムは米国に賠償請求をしないんでしょうかね?実に大らかな国民ですね。」「それがベトナムの品格と言いましょうか。プライドでしょうね。第二次大戦中に日本軍にも 200万人犠牲になっていますが、外交上一言も口にしたことがないそうですから。自分たちが悲惨な目にあったのを餌にお金なんかもらいたくないのでしょう。」
「ところで昨日、日・メコン 6ケ国外相会議があったのにほとんどの全国紙は伝えていないですね。今やアセアン関係ならメコン地域が最大のトピックスなのに。」と部長。このセミナーの前日に日本・ラオス投資協定が署名され、またカンボジアーラオスーベトナム「開発の三角地帯」のプロジェクトに日本アセアン統合資金から約2000万米ドルが使用されることも決まりました。ほとんどの読者の方は何もご存知ないことでしょう。一般メディアが取り上げないからです。2005年の 2国間 ODAの実績は上記 3ケ国合計で約 800億円、原資はもちろん皆様の税金です。
「最近のメディアは時代を見る目がないというか、売上第一主義に陥っているというか、中国の輸出規制についてだってほとんど何も報じてはいないではないですか?中国のおかげで生き延びた中小企業には大打撃でしょう。」と私。「それは自業自得というものですよ。無手勝手に出て行っただけですから。だまされて損している人も多い中、儲かっただけでも良かったと思うしかないでしょう。」と部長。私自身が大手商社に24年も在籍したのでよくわかるのですが、大手企業は奇妙に政府と似たところがあります。要は体力のない中小企業はそろそろ退場しなさいという事なのでしょう。
このメコン地域にすでにどのくらいの日系企業が進出しているかというと2006年の統計でタイ 1,294社、ベトナム 604社、ミャンマー58社、ラオス38社、カンボジア35社です。在留邦人数でいうとタイに40,249人、ベトナムに 4,754人、ミャンマーに 605人、ラオスに 442人、カンボジアに 878人。メコン 5ケ国への日本人渡航者数は年間約 189万人です。予想より多いと思われた方が多いのではないでしょうか。
「拡大」メコン地域には上記 5ケ国に中国の雲南省、広西省も含まれるので西ヨーロッパとほぼ同じ面積に約 3億2300万人の人口がいます。2015年にはこの地域が道路網、通信網、電力網できちんとつながるように計画されています。単に人件費が安いから生産拠点として利用する、というのではなく、市場としてもとらえられる企業、単一国でなく複数国での特徴を生かした展開ができ、その地域にとって感謝され必要とされる企業がこれから勝ち残っていくような気がします。前段で述べた数字からも小規模企業であっても日系企業や在留邦人のためのサービス業は需要があると思われます。
河口容子
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