先週号で中国の小規模投資家はライセンス・ビジネスやフランチャイズ・ビジネスに関心があると書きましたが、理由は簡単です。たとえば今後上場しそうな中国の中小企業に投資したところで同族経営の中でもみくちゃにされるだけ、また上場までにいろいろ改善しなければならない点があまりにも多いからです。一方、先進国からのブランド・ネームやノウハウを借りてビジネスをすれば自由に手っ取り早くビジネスになるからです。彼らにとってビジネスとは日本人が株式や投信を買って運用するのと同じ感覚です。一定の仕事に対するこだわりや社会貢献というような高邁な精神ではなく、空気を読んで判断し、投資をし、利益を得る、それだけの事です。ですからタイミングが重要です。
先進国でライセンサーやフランチャイザーを探さなくてはいけない私は、この話を聞いた時、日本企業はまず無理と判断し、2008年 1月31日号「パリの日本人」に登場する在仏日本人コンサルタント N氏に応援を依頼しました。案の定、資金負担がないとあってフランスをはじめヨーロッパ企業がリストを作成しなければならないほど名乗りをあげてきました。 N氏も「日本は景気が悪い、悪い、と報道されるので欧州企業は誰も見向きもしてくれないだけに中国の話をいただけて本当にうれしい。」と大張りきりです。
実は先日アセアン諸国関係者のカクテル・パーティがあり、「大袈裟な不況報道のおかげでアセアン諸国も日本に関心を持たなくなることが不安」という国際機関の管理職のご意見もありました。実は私の周辺では失業者などどこにも見当たらず、近隣のちょっと高めのレストランや美容室はいつも満員、逆に安かろう悪かろうのお店は撤退して行きます。私の日本のクライアントは未曽有の売上と利益を更新しています。おそらく業界や地域により明暗がくっきり分かれているのではないかと思います。
なぜ上述のように日本企業はだめとさっさと判断したかと言うと、ボトム・アップによる決裁スピードの遅さ、サラリーマン根性による自己保全、排他性と職人気質によるフレキシビリティのなさが新規事業への積極性をはばむからです。また、中国にはすでに製品を輸出していたり、アンテナ・ショップを出していたりするため、急に方向転換ができない、ということもあります。タイミングを逸する条件がこれだけ揃えばアプローチをする気も失せてしまいます。
一方、トップダウンの小型企業やベンチャー企業には有利な時代になったと言えます。大手企業に比べ月給が高いとは思えませんが、社員一人一人が懸命に夜中まで「自分の会社」のように仕事をしている姿は非常にすがすがしく目に映ります。
フランスの N氏は「世界的不況でフランスでは起業する人が増えた」と言います。「雇用条件が悪くなっているから、自分でやるしかないと思い始めた」のだそうです。「日本はサラリーマン至上主義で子どもの頃から独立せよという教育を誰もしませんからね。なかなかフランスのようにはいかないでしょう。」と私。ベトナム人の知人が「ベトナムは社会主義です。日本は会社主義です。」と見事な日本語で私を笑わせてくれたことがありますが、会社に依存できなくなった今、日本は何主義になるのでしょうか。
河口容子
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