[055]鷲ノ巣村

コート・ダジュールの魅力は海岸線のみならずその後方に点在する「鷲ノ巣村」にもあり。その集落は険しい山の上に所狭しと要塞を中心に家屋や商店が建ち並び天国に最も近い城下町みたいなものでしょうか。随分辺鄙な所にあるなと思いきや、歴史背景を考えると昔の人達は切羽詰って山奥に逃げ込んだのでしょう。
かつてマッサリア(現在のマルセイユ)から荒くれ者達が侵入して奪略と破壊の中、おちおちと海岸沿いでは暮らして行けなかったのかもしれません。しかしどの村も本当に山の天辺とも言える位に高い所にありニースやカンヌの中心街からバスで行ってもゆうに30分1時間は登ります。バスなのにスピードを70キロ以上も出すし、整備されているけど傾斜の上にカーブが多い。高所恐怖症の私は乗車中足がすくみっぱなし。バスは揺れるし、ガードレールが低いから一つ間違えると断崖から地中海にドボーンという事もありやはり心臓はバクバク。


「鷲ノ巣村」は大体が同じ様な作りになっています。家と家の間が狭く急傾斜の石段が続き、一般家屋に混じってところどころにお土産屋、しかし、特記すべきは同じ様な形相を持つこれらの村ですがそれでもその村だけのカラーがありました。だからどうぜ似たり寄ったりだろうから鷹ノ巣村は一つだけ見ておけば良いかなんて思わず、時間をかけてひとつづつ見歩いてもらいたい。私も今回出かけるまでは「一つ二つ見れば充分でしょう」とたかを括ってました。でも時間を作り、バスをフル活用して数ヶ所を回りその魅力に圧倒されました。カメラのシャッターを切る手が止まらない。
フランスには47の地方があり90の県がありますがそれは行政上のものであり、蓋を開けると米国のような人種の坩堝。フランス人と一言では括れない程に異なった文化、言語、食があると思います。だからコート・ダジュールと言えども、ただの富豪のヨットハーバーやリゾート地だけでなく、マグレブ人文化があり、鷹ノ巣村集落があるのでしょう。フランスはゆっくりと時間をかけて旅したい国です。気候のみならず住む人も地中海性気質だからケセラ・セラ的なところがあります。あせらず、ゆっくりと旅したいところです。
どの鷲ノ巣村も観光地なのでレストランもカフェもありますが、展望台にて絶景を楽しみながらピクニックランチをする事をお勧めします。乗車前にパンやお惣菜、飲み物を用意して空に最も近い自分だけのレストランにてボナペティ。
夢路とみこ
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