[252]読者Q&A『競合他社への転職』

2012年10月28日

■読者からの質問
 
某メーカーに勤務する技術者です。昨年9月末より海外の生産拠点にて製造技術マネージャーに従事しております。現在、競合他社への転職を考えており内定も頂いております。
 
そこで退職の旨を現地法人社長に伝えたところ、どうも同僚から私の転職先が漏れており、「競業避止義務で2年間は競合他社に入れない決まりがある。それを考えてから話に来い」と言われてしまいました。
 
競業避止義務については、就業規則には記載されておらず、入社時の誓約書に規定されているようです。これについては詳細を現在確認中です。
 
HPの「競業避止義務に対抗する」の項を拝見させて頂いたところ、退職後の競業避止義務の有効性について、「平社員の場合、まず義務対象にはなりえません。」との事でしたが、私の立場は非常に微妙です。
 
日本に居る間は全くの平社員でしたが、昨年9月末に海外に来て肩書きはアシスタントマネージャー、今年1月よりマネージャーになっております。職責手当ても30万円/年出ています。但しアシスタントマネージャーからマネージャーへの昇給は無し(本人通知も無し)。基本的によほどの若手ではない限り、平社員は皆、海外赴任するとアシスタントマネージャー以上になっています。この立場は平社員とはみなされないのでしょうか?仮に管理職とみなされるならば、昇給が無いのもおかしな話かと思います。
 
上記の職責手当て以外に競業避止義務の代償にあたると思われるものは一切頂いておりません。また、弊社には退職金制度そのものが存在しない為、その上乗せも無いと思われます。
 
仮に競業避止義務を無視して競合他社へ転職し現社から訴えられた場合、敗訴する可能性が如何なものかとご相談させて頂きたくメールした次第です。情報が少ないかも知れませんが、何かしらアドバイス頂ければ幸いです。
 
■たまごやの回答
 
お便りありがとうございます。例によってアバウトに答えさせていただきます。
行動を起こす時には関係省庁の窓口にてご確認ください。
 
『競合他社への転職』
 
競業避止義務については、職業の自由は憲法に規定された基本的人権でありながら、実際には競合他社への転職は障害があるのが事実です。これは競合する他社に転職されると、元の会社が実害を蒙るからです。損害があるのであれば賠償してもらうというのが法治国家でである以上、競業避止義務は致し方ないところでしょう。実害が無いのであれば、そもそも競業避止義務はありません。
 
お尋ねの文面から、お勤めは相当の大きい会社だと思いますので、社内規程の整備はそこそこされているように思えます。おそらく会社側としてはぬかりは無いでしょう。ただ、規程については「脅し・抑止力」効果を狙った記述もあるので、そのあたり実際と比べて妥当であるかどうかの吟味は必要と思います。
 
確認すべきは、社内規程(誓約書、就業規則)に禁止項目が明記されているかどうか、そして違反した場合の制裁措置が具体的に書かれているか、です。さらにあなたが転職することによってもとの会社にどれくらいの実害があるかどうかも重要です。もし禁止項目が明記されており、それに対する違反が明確であり、かつあなたが会社に実害を与えるほどの機密を保持しているならば、相応の制裁を受けることはやむをえないでしょう。
 
規程に禁止項目が明記されていない場合は、人によって異なる判断となり客観性を疑われますので、競業避止義務に対抗できる可能性はあります。
 
しかし発想を変えれば、これらの規程が整備されている場合は、たとえば違約金を支払えば、競業他社に転職できる、つまり「先に進める」ということです。一度しかないご自分の人生です。よく考えてお決めになることです。