[105]残業あれこれ(4)サービス残業
サービス残業とは時間外労働に対して賃金が支払われない残業のことをいいます。通常の労働時間が1日8時間とすれば、それを越えた分については時間外労働となります。労働基準法では、時間外労働に対しては二割五分増しの賃金を支払うことを義務付けていますから、この労働時間に対して賃金の支払いが無いとすれば当然ながら違法行為となります。
違法行為であるサービス残業が蔓延しているのが日本の土壌であり、厚生労働省はようやくその実態調査に乗り出したようです。
サービス残業の実態は労働者個人を対象とする「労働力調査」による推計年間労働時間から、事業所が提出する「毎月勤労統計」の年間総労働時間を差し引くことによって求められます。
1997年の例では労働力調査が2300時間、事業所の提出する労働時間が2000時間となっておりここにサービス残業として年間一人平均300時間という数字が計算されるわけです。時間給が1,000円としても年間30万円のタダ働きが日本では行なわれているという結果になっています。
サービス残業の多くは、労働者が望んでいるものではなく、会社が残業時間として認めないことに起因しています。帰りたいのに帰れない。無理に帰れば査定に響く。誰も帰ろうとしない。など、職場の和を乱すことは誰でもやりたくありません。
サービス残業をなくすには、まずきちんと正しい労働時間を労使共に把握することから始まります。その中で時間外労働となる部分があるなら、使用者は進んで時間外手当てを支払わなければなりません。その上で、人件費を節約したいなら残業をしないで済む方法を考えます。こういう順番でないと、結局労働者が泣き寝入りをすることになってしまいます。
もし、サービス残業中に事故が起こって労働者が怪我でもしたら、使用者は大変なことになります。サービス残業中は表向きは仕事をしていない時間ですから、その時間に怪我をしても労災保険は適用にならないでしょう。使用者は労働者に対して自前で保証しなければなりません。もし、死亡事故にでもなったら、その金額は半端じゃすまないでしょう。
残業代をケチったばかりにとんでもない出費のリスクがあることを、使用者は認識すべきです。サービス残業は「しないさせない」をモットーに、労使共に意識を高めたいものです。