[122]退職金あれこれ(-7-)行方不明者に対する退職金
【行方不明者に対する退職金】
死亡退職金と違って行方不明者に対する退職金支払いはちょっと難しいものがあります。例えば夫が行方不明になったからといって、配偶者が退職届を出し退職金を請求したとしても、退職金は本人以外には支払えないので、配偶者に退職金を渡すことはできません。退職金は賃金ですから本人に直接渡すことが労働基準法で義務付けられているからです。(第24条。賃金は、通貨で、直接労働者に、その全額を支払わなければならない)
ただし例外もあり「解釈:昭和63年3,14基発150号」によれば賃金は使者に支払うことは差し支えないとされていますので、使者として認められる場合には、本人以外の者にも支払うことができます。しかし、本人が行方不明である場合には配偶者を本人の使者として認めることなどできませんので、やはり配偶者に退職金を支払うことはできないことになります。
しかしこれでは埒があきませんので、本人が行方不明となった場合には法務局などの供託所に退職金を供託する方法をとるのが普通です。退職金を法的に供託所に保管してもらい、後日本人が受けとれるようになったときに退職金を供託所から受領するという方法です。この方法により、会社は退職金を本人に支払ったものとみなされます。
通常行方不明者の扱いは民法の「不在者の財産管理人」の定めによる場合が多いです。これにより退職金を含めた行方不明者の財産について、一定の手続きによって配偶者が受領することができます。
管轄は家庭裁判所で、財産を残したまま住所または居所を去った者(不在者)に対して、不在者の親族や債権者などの請求によって財産の管理(処分)を行うことができることとされています。配偶者が生活費などを請求する場合には、この方法による事が多く、退職金の扱いも当然これに含まれます。