[083]年休あれこれ(13)罰則

 

【罰則】
 
年次有給休暇(以下、年休)を労働者にとらせないと使用者には厳しい罰則が待っています。これは刑事事件なので簡単ではありません。悪質な経営者には逮捕状が出ます。
 
労働基準法第39条に違反するものは6箇月以下の懲役又は30万円以下の罰金に処する(労基法119条)
 
労基法第39条第1項は「使用者は・・有給休暇を与えなければならない」と規定していますが、その解釈は以下のようなものです。
 
「休暇の付与義務者である使用者に要求されるのは、労働者が権利として有する有給休暇を享受することを妨げてはならないという不作意を基本的内容とする義務にほかならない。」(S48・3・2最高裁第二小法廷)
 
従って、労働者の請求する時季に所定の有給休暇を「与えない」と違反になります。
 
  • 正当な事由がないのに時季変更を求めた場合
  • 労働者が年休指定した日に出勤を命じた場合
  • 年休取得に係る日の賃金を減額して支給した場合
これらも職場ではありがちな事例ですが、いずれも違反行為となります。
 
なお、違反行為については所定の未払い金のほか、裁判所は付加金の支払を命ずることができます。これはいわば損害賠償・慰謝料のようなもので、未払金と同額を請求できます。ただし、この請求は、違反のあった時から2年以内にしなければなりません。(労基法第114条)

[082]年休あれこれ(12)年休の賃金算定

 

【年休の賃金算定】
 
晴れて年次有給休暇(以下、年休)は取れたけど、給与明細を見て愕然。基本給しかついていない・・・
 
こんなことありませんか?
 
年休の賃金については、まず就業規則を確認してください。もし、年休の賃金算定に関する事項があればそれに従うことになります。
 
通常は年休日の賃金については、
  1. 平均賃金
  2. 通常の賃金
  3. 標準報酬日額
のいずれかを使用します。(労基法第39条)
 
この中で一番金額が低いとされる(3)標準報酬日額は就業規則で定めるほか、労使協定が必要になります。
 
この中で(2)の通常の賃金とは、休暇を取る日に支払われる予定だった賃金のことです。パートやアルバイトなど勤務時間に変動が多い雇用形態に適用されることが多いです。
 
(1)の平均賃金は当日を含まない過去3ヶ月間の総賃金を3ヶ月の暦日で割ったものとなりますが、過去3ヶ月間に支払われた賃金総額を実際に労働した日数で割った額の100分の60に満たない場合は、後者の100分の60の金額を採用します。(労基法第12条)
 
年休の賃金は以上のようにその計算方法は定められているので、上記方法はいずれかを選択したら、全ての年休賃金算定は同じ方法を採らなければなりません。個別に年休賃金が違うということはありえないのです。しかし現実には使用者の恣意的な操作が入ることがあるので注意を要します。
 
また、上記平均賃金もしくは通常賃金は、出勤していれば当然支払われる賃金ですから、基本給だけでなく諸手当も含まれるのが普通です。
 
ただし、職場に出勤していないので、職場までの交通費は支払われないでしょう。また完全出来高払いの請負制の場合は最低の賃金となる場合もあります。
 
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[081]年休あれこれ(11)8割出勤の意味

 

【8割出勤の意味】
 
年次有給休暇(以下、年休)は労働者の強い権利です。これは、使用者から与えられる休暇ではなく、勤続半年間経過すれば自動的に発生する法律で認められた権利です。
 
ただし、その要件に【8割出勤すること】というのが盛り込まれています。使用者側にはこの要件を盾にとり、年休を与えない、ということがままあるようです。
 
8割出勤とは、労働の義務がある日を10割とし、そのうち8割出勤していれば年休の要件は満たされます。
 
労働義務がある日を基準としますので、休日は含まれません。企業によっては休日をも含めた延べ日数の8割として計算しているところもあるようですが、これは間違いです。
 
年休を取得した日は労働義務の無い日とされますが、勤怠上は「出勤扱い」となりますので、年休の要件に不利になりません。
 
労働者の年休付与日数は、採用後6か月の経過で10日です。その後1年経過毎に1日加算されます。
その年の年休日数→(1年6か月時点で、10日+1日=11日)
 
たとえばこの1年間体調が悪くて出勤率が8割に満たなかったとします。その場合は、年休の付与要件から外れますので、年休は発生しません。その年の年休日数→(1年6か月時点で、0日)
※前年からの繰越があった場合はその日数を加算
 
しかし、翌年は元気になり1年間の勤務が8割を満たしたとします。この場合は年休は発生しますが、勤続年数は8割満たなかった前年も含めます。
(2年6か月時点で、10日+2日=12日)
 
つまり、8割に満たない年があっても、勤続年数には繰り入れるということです。
 
なお、未消化の年休日数は、翌年への繰り越しが認められますから、労働者は最大40日の休暇権を保持することがあり得ます。

[080]年休あれこれ(10)年休をとると査定に影響する?

 

【年休をとると査定に影響する?】
 
今では、仕事とプライベートは別物であり、それを上手に切替えできることが「できる仕事人」の条件でもあります。ところが、多くの会社ではいまだに会社を休まないこと=仕事が出来ると解釈されていたりします。
 
先日も某会社で勤務状況が張り出してあって、それを見ると年間で40日しか休んでいない人がいる。年間休日は104日であり、それにも満たないどころか年次有給休暇(以下、年休)の残はなんと40日。つまり144日休めるところを40日しか休んでいないのです。
 
では年間休日に満たない部分は休日出勤となるわけですが、実際はそうではなくサービス残業となっていることでしょう。本人も本人ですが、こういう状況を放置している人事総務部の仕事振りがうかがえます。
 
さて、上記のように、休まないことが美徳とされる世の中の風潮は否めないところですが、しかし逆に正規の休日をとって休んだことが、査定に不利に働くのであれば福利厚生上望ましくないといえます。しかし現実には、年休を取ったことが査定に響くということはよくあるようです。
 
年休をとったために皆勤手当やボーナスに影響することに関しては、労基法付則第134条で「有給休暇を取得した労働者に対して、賃金の減額その他不利益な取扱いをしないようにしなければならない」とする訓示規定しています。
 
精皆勤手当や賞与の算定に際して、また賃上げ規定の算定に関して、年休を取得した日を【欠勤扱い】又は【欠勤に準じて取扱うこと】は不利益の取り扱いにあたるので許されません。
 
皆さんも、年休取得して喜んでばかりいると、実は稼働率では欠勤扱いだったなんてこともありえますので、十分チェックする必要があります。

[079]年休あれこれ(9)基準日の統一

 

【基準日の統一】
 
年次有給休暇(以下年休)は通常勤務してから半年後に10日付与されます。
 
ところが、入社日というのは人それぞれですから、社員が少ない会社の場合はともかく、大勢になったらとても管理しきれるものではありません。そこで、会社としては、年休を算定する上で統一した基準日を設けるが普通です。
 
新入社員の場合、基準日を設ければ基準日から算定して6ヶ月未満の人もいれば6ヶ月以上の人もいるでしょう。ちょうど6ヶ月という人もいるかもしれません。
 
このように基準日を設けた場合は、さまざまな条件の人がいるわけですが、いずれも不利になるようにしてはいけないという事があります。つまり勤務期間の切捨てはもちろんのこと四捨五入も認められません。常に切り上げによって対応しなければならない、ということです。
 
極端な話、例えば基準日を3月1日とした場合、2月28日に入社した場合は翌日3月1日までは勤務日1日ですが、この場合も6ヶ月勤務したとみなして、10日の年休を付与しなければなりません。
 
基準日を統一した場合、その後の出勤率の算定は、全員について統一基準日から向こう1年間で計算します。
 
一旦決めた基準日を変更する場合も、常に労働者に不利益にならない方法を採らなければなりません。例えば3月1日の起算日を単にその年の4月30日に変更することは年休の付与をいたずらに遅らせることになり、違法行為となります。(つまり早めることしか認められないということです)