[073]年休あれこれ(3)休日には年休を充てられない

 

【休日には年休を充てられない】
 
年次有給休暇(以下年休)は労働の義務が生じている日に対して、その労働を減収無く免除するものです。
 
したがって、もともと休日になっている日を年休に充てることはできません。労働基準法では年休の買い上げを禁止していますが、買い上げてしまっては本来の「休む」という目的が達せられないからです。休日に年休を充ててしまうと、労働義務を免除することにならず、買い上げているのと同じことになってしまいます。だから、禁止しています。
 
では、休日なのに休日出勤を命じられた場合に、その日を年休に充てられるでしょうか?
 
一見、労働日ですから労働免除を目的とした年休が使えそうですが、残念ながら休日労働を命じられた日には年休は充てられれないと解釈されています。
 
もっとも、休日労働は割増賃金の対象となりますから、がっぽり割増分をいただいて他の日を年休に充てた方が賢いといえましょう。
 
例:一週間連続で年休を充てる場合
 
月 火 水 木 金 土 日
労 労 休 労 休 労 労
働 働 日 働 日 働 働
日 日   日   日 日
 
の場合は、以下のように労働日に対して年休を請求します。
 
月 火 水 木 金 土 日
年 年 休 年 休 年 年
休 休 日 休 日 休 休

[072]年休あれこれ(2)年休は理由を問わない

 

【年休は理由を問わない】
 
友人が年次有給休暇(以下年休)を取ろうとして請求したところ却下されてしまったという話を聞きました。年休請求する時には、会社に請求用紙が用意されていますが、その中の理由の欄に「スキー旅行」と書いてしまったのです。それを見た上司は「スキー旅行に年休はとらせない」と、こうきたわけです。
 
こういう上司を持った部下は不幸です。年休がとれないのが不幸なのではなく、今や常識となった「年休」の取り扱いについて、手取り足取り教えなくてはならないことが不幸なのです。
 
部下を一人でも持ち、仮にも上司と呼ばせるならば、その部下の労働管理を勉強するのは上司として当然の「仕事」です。にもかかわらず、勉強もせず、自分は年休などとったことが無いと自慢し、休まないことを美徳とし、それを部下に押し付ける上司は、旧態依然とした会社に多いです。そしてそういう会社は今きっとリストラで大変なはずです。
 
言うまでも無く、年休は理由を問わず取得することができます。ですが、請求用紙に理由を書く欄があるので、理由を書かなくてはいけないと思ってしまいます。ですが、ここは空欄でも構わないのです。それでもし差し障りがあるようなら「私用のため」あるいは「家事都合」とでもしておけば良いでしょう。請求用紙に理由欄が無い会社にお勤めの場合は、その会社の労務管理は大変進んでいるといえます。
 
判例をみてみましょう。「年次休暇の利用目的は労基法の関知しないところであり、休暇をどのように利用するかは、使用者の干渉を許さない労働者の自由である、とするのが法の趣旨である」(S48・3・2最高裁第二小法廷判決)
 
つまり年休は病気に充てるも、長期のバカンスに利用するも、家でのんびり休息をするも、はたまた労働組合の大会へ参加することも自由です。そしてその年休利用理由すら申し出る必要がありません。
 
例外はあります。自社のストライキのために年休を利用することはできません。判例にもこうあります。「ストライキは年休に名を借りた同盟罷業にほかならない」(S48・3・2最高裁第二小法廷判決)ただし、他の会社のストライキに参加することは認められます。
 
年休は、労働者が安心して休める為の制度であり、理由としては急用などやむをえない事情で取得するのではなく、スキー旅行や静養の為の休暇こそ、年休の本来の目的と知るべきでしょう。

[071]年休あれこれ(1)使用者の承認は不要

 

【使用者の承認は不要です】
 
読者の皆さんから圧倒的に多い質問は年休についてです。皆さん年次有給休暇(以下年休)を取るにもエライ苦労されているようですね。ということなので少しばかり年休について続けていきたいと思います。
 
まず、年休を巡って総務と渡り合う時に「有休」という言葉を使うのはやめましょう。有休というのは法律的には何のことかわからないのです。ここはきっちり「年次有給休暇」あるいは「年休」という言葉をピシリと使って相手に先んじます。年休という言葉を使うだけで、コイツはちょっと労働法を知っているな?と思わせるのです。
 
さて、「年休は請求して使用者の承認を得なければ取得できないか?」という問題があります。質問として「年休を取らせてもらえない」というのが非常に多いのです。
 
これは、労働日の80%以上を就業しているなど、労基法第39条第1項第2項の要件が充足されて年休が存在する場合は、与える与えないの問題ではなく「労働者は年休の権利を取得している」のであり、「使用者は年休を与える義務を負う」ということになっています。
 
つまり、使用者が与えるのではなく、労働者が既に持っているものなのです。したがってそれを使うかどうかの問題なので、請求は本来不要なのです。
 
具体的に労働者が年休を宣言した時には、使用者ができるのは時季の変更のみ。もし時季の変更権を行使しない場合は、そのまま年休を行使していいということになります。
 
年休の成立要件として、労働者による「休暇の請求」や、これに対する使用者の「承認」の観念を容れる余地はないとされています。(S48・3・2最高裁第二小法廷判決)

[070]日直

 

日直とは、休日に会社内に非常時に備えて待機させることをいいます。日直とは本来「常態としてほとんど労働する必要のない勤務であり、非常事態に備えて待機する状態」でなければなりません。(昭63.3.14基発第150号参照)
 
労働基準法では第4章(適用の除外)の第41条3項で、「この章、第6章及び第6章の2で定める労働時間、休憩及び休日に関する規定は、次の各号の1に該当する労働者については適用しない。」【監視又は断続的労働に従事する者で、使用者が行政官庁の許可を受けたもの】
 
と定めています。つまり、これが日直にあてはまります。監視または断続的労働は通常の労働でないことを示しており、使用者は労働基準監督署の許可を受けなければならないと規定しています。
 
日直は通常の業務を行なわず、労働の指揮監督を受けないので労働時間とならず、通常の賃金を支払う必要はありません。ですが別に日直手当を支払う必要があります。これが出動や通常の業務を前提としたものであれば、労働時間となり、通常の賃金を支払う必要があります。名称は日直でも通常労働と内容は変わらないからです。
 
例えば、24時間体制でレッカー出動を業務としている場合は、たとえ8時間の中に1回の出動が無くても、その待機時間8時間は手待ち時間として労働時間としなければなりません。
 
営業していない会社の中で、滅多にかかってくることのない電話に対しての単なる電話番は日直として扱うことができます。しかしこれが年中無休の会社でサポートを電話で受けているような場合は、たとえ名称が日直でもその実質は労働時間となり、それに見合った賃金を支払わなければなりません。しかもそれが当人にとって休日であるならば、割増賃金を支払う必要があります。
 
会社の休日に交替で日直をさせ、その為に週労働時間40時間を超えることがあっても、それを労働時間としない場合が見うけられますが、これは日直の本質を理解していないケースです。日直とはあくまでも非常に備えての待機でありますから、通常の業務であってはいけないのです。
 
なお、日直として待機していても、たまたま非常事態のため出動したときは、その実働時間は労働時間となりますので、その労働時間について休日労働の割増賃金を支払わなければならないので注意が必要です。
 
また、会社での待機を「日直」として扱う場合には、労働基準監督署長の許可を受ける必要があり、通常の賃金の3分の1以上の手当の支払いが必要となることを忘れてはなりません。

[069]労災保険の給付

 

労災保険は業務上の災害に対して支払われる保険です。保険料は事業主が全額負担します。
 
【給付内容】
 
1)療養給付
 
業務上生じた負傷、疾病について完全に治癒するまで治療を受けられます。
 
2)休業給付
 
業務上の負傷、疾病により勤務できなくなり賃金を受けられない場合は、4日目から給付基礎日額の6割が休業補償として支給され、加えて特別給付金として2割が支給されます。
 
3)傷病年金
 
療養を開始してから1年半経っても治癒せず、更に療養が必要な時に支給されます。程度に応じて傷病等級第1級から第3級までの3段階に区分され、療養を必要とする期間1年につき年金給付基礎日額の313日分(第1級)227日分(第2級)又は245日分(第3級)の年金が支給されます。
 
4)障害給付
 
負傷や疾病が治癒したあと障害が残った時に支給されます。障害の程度に応じ、年金給付基礎日額の313日分(第1級)から131日分(第7級)までの年金が支給されます。(第8級)から(第14級)までの場合は一時金が支給されます。
 
5)遺族給付
 
負傷や疾病により労働者が死亡したときに遺族に対して支給されます。遺族給付は、年金給付が原則ですが、一時金が支給される場合もあります。遺族年金の受給権者は、給付基礎日額の1000日分を最高限度として、年金の前払いを遺族年金前払一時金として請求できます。
 
6)介護給付
 
負傷や疾病による障害により、現に介護が必要な時に支給されます。障害の状態によって介護に要した費用の実費(上限額あり)又は一律定額が支給されます。
 
7)業務上労働者が死亡したときは葬祭給付が支給されます。通常は遺族に支給されますが、遺族がいない場合などには葬祭を行なったものに対し支給されます。
 
※労災は通勤災害にも適用されます。