[058]健康保険

 

健康保険は、加入している従業員やその家族が、病気になったりケガをしたりした時に使える保険です。治療費や分娩、死亡した時の一時的な経済的負担や、療養中の生活費の補助を主な目的としています。
 
通常のケガや病気であれば、健康保険もしくは労災保険から補助が受けられます。両方から補助を受けることはできません。また、事件や犯罪、喧嘩などでケガを負わされた時なども対象外です。
 
こういう時は、相手に治療費や慰謝料として損害賠償を求めるわけですが、保障が保証されている訳ではないので、こういう時は自衛する必要があります。損害保険会社では相手にケガをさせたとき、またケガをさせられたときの為の保険が用意されていると思いますので、それらを利用します。
 
健康保険の適用範囲は、法人の場合は全事業所に適用。個人の場合は従業員5人以上が適用となります。適用になるということは強制です。加入非加入は選べないということです。
 
給付の種類
 
・療養の給付
・高額医療費(自己負担額一定額を超えた場合の超過額)
・訪問看護療養費(被保険者が寝たきりの場合訪問看護費)
・埋葬料
・疾病手当金(療養中の給与補填)
・出産手当金(出産のために休業した場合の給与補填)
 
被保険者が退職したあとでも、資格喪失の前日時点で1年間以上被保険者であった場合は、喪失以前に治療を受けていた疾病については引き続き給付を受けられます。疾病手当金や出産手当金についても同様です。
 
なお、健康保険は政府が運営するものと、大規模な事業所が健康保険組合を作ってそこが運営するものとあります。

[057]社会保険

 

募集広告を見ますとよく「社保完」と書いてあることがあります。これは「当社は従業員のため社会保険を完備しています」という意味で使われています。では社会保険が完備していない会社というのはあるのでしょうか、というと今ではほとんど無いんですね。全く無いわけではありませんが極めて稀です。
 
社会保険非適用となる業種は、農林水産業、理容、美容業、飲食店等のサービス業、弁護士、社会保険労務士などの専門サービス業でしかも個人に限られます。法人の場合はすべて適用になります。適用になると加入は義務付けられます。つまり加入非加入は選べません。
 
ではどういうものが社会保険といわれるのでしょうか?通常は社会保険というのは、健康保険、厚生年金、雇用保険、労災保険の4つをいいます。健康保険と厚生年金は厚生省の管轄、雇用保険と労災保険は労働省の管轄になります。
 
社員になりますと健康保険と厚生年金は強制加入です。それまで国民年金や国民健康保険に加入していた人は会社の健康保険・厚生年金に切り替えます。これは保険料の半額を会社が負担してくれますので喜ぶべきことであり、国保より当然負担が少なくなり有利です。
 
雇用保険は失業した時にもらえる失業給付のための保険です。事業所としては雇用保険も強制加入であり、労働者の不意の失業に対し保証をする性格のものであるといえます。ただし労働者負担分の保険料があります。つまり、労働者も保険料を払わねばなりません。
 
労災保険というのは、労働中に起きた怪我や病気に対して支払われる保険です。これも従業員がいる事業所では強制加入になります。従業員が加入するのではなく事業所が加入します。保険料も事業所が払います。労働者負担分の保険料はありません。
 
仕事中に起きた怪我を健康保険で治療すると詐欺になりますので注意してください。仕事中の怪我は労災保険で治療しなければなりません。ところが、労災保険というのは大変審査が厳しく、従業員が怪我をして労災保険を使うと「なぜそういう事故がおきたか?」ろきびしく追求され、今後そのような事故がおきないように対処させられます。
 
そのため事業主はなるべくなら労災保険を使いたくないという心理が働きます。なかには労災にせず健康保険を使ってくれとか、社長のポケットマネーで治療させられる場合がありますが、後遺症などが残った場合はあとで必ず問題となりますので、そのような業務命令があった場合でも、仕事中の怪我は必ず労災を使うように要求しましょう。
 
またよくある誤解に、労災だと休業中の給料が保証され、健康保険では保証されないといわれることがありますが、そんなことはありません。労災でも健康保険でも、休業中は60%まで給付があります。この場合も、よく事業主が給料は出ないと一言で片付けられる場合がありますが、給付は会社が払うのではなく所轄機関が払います。したがって会社の懐は傷まないのです。にもかかわらず給付は無いと言い切る会社は給付分を着服している可能性があります。
 
気をつけましょうね。

[056]新卒派遣

 

厳しい時代を生き抜くため、企業では様々な取り組みが行なわれています。その中でもコスト管理は最優先に練り直しがされている部分ではないでしょうか。特に一番のネックとなるのが人件費。今までのような体制では時代に乗り遅れるという危機感から、費用対効果の高い人件費対策が練られているようです。
 
今までの年功序列の体制というのは、新卒学生を採用し、その後10数年間の教育期間を経て、企業戦士となり身を粉にして働き、その後第一線から退いても後は退職まで仕事場で悠々自適の毎日を送る、そんな図式でした。しかしそのような体制はバブルの崩壊で一変に崩れ、雇用にも新たな風が吹き込んでいます。
 
企業で一番ほしいのは即戦力となる人材。今までのように新卒学生を育てている暇は無い。新卒をとらず中途採用でほしい人材を確保する。合理的といえば合理的なやり方。しかし、すべての会社がそうなってしまったら、新卒学生の行き場が無くなり社会問題となってしまいます。実際大学は時代の対応に慌てています。今まで、ゆっくりと勉学にいそしんでいた学生が、学生時代から何かしらスキルを身に付けなければ採用されなくなってしまった。
 
大学当局も革新を迫られています。タダでさえ少子化の影響で新入生は少ない。ウチの大学に入れば企業で必要なスキルは実につくというようなウリが無ければならない。大学当局も学生もおちおちしていられない。大学が就職予備校となる、新たな時代の到来です。
 
そんな時代の申し子としてか、新卒派遣なる言葉が生まれています。新卒派遣とは、新卒学生が派遣社員となり、企業に派遣されること。新卒で正社員の道が無ければ派遣社員になるしかない、ということです。しかし、新卒派遣にも朗報があります。派遣社員が派遣先の企業に正社員として採用されることに道を開く「紹介予定派遣」が、12月1日から解禁されたのです。
 
企業としては使える人を採りたいという要求があり、また派遣社員のほうからすれば自分に合った会社で働きたいという要求があります。その橋渡しと生まれたのが「紹介予定派遣」。これは効果のある方式として欧米ではすでに定着した制度です。
 
新卒学生を採用しても実際に使えるかどうかはわかりません。それを見極めるには普通は試用期間を置きますが、試用期間というのは法律上はほとんど本採用と同じように拘束されます。不採用にするには解雇とほぼ同じ手続きが必要。しかし、派遣ならばそういうことはないので、企業にとっては気軽にほしい人材を見極めることができる制度でもあります。
 
派遣も結局は正社員になれない人の受け皿というのも淋しい限りですが、こういった雇用の変革の波を乗り越えた時点で、結局年功序列もみなおされまた元に戻るのではないかという気もします。
 
使える人材が今すぐほしいという気持ちはわかりますが、商品でも人材でも自社にあったものを育てるのも仕事なはず。流動的な人材にばかりに頼っていては、結局良い人材は他社にも流れる可能性があり、差別化にならない。忠誠を誓う日本ならではの流儀がここまで日本経済を成長させたことも忘れてはならないように思います。

[055]フレックスタイム制

 

業務の多様化に伴い、労働時間も一律なものでは業務形態にそぐわないことも多くなってきています。そのために労働時間もある程度自由に採択できるような流れになってきました。フレックスタイム制もそんな時代の申し子です。
 
フレックスタイム制とは始業・終業の時刻を労働者自身が決定できる制度です。といっても自由気ままにと言うことではなく、1日のうちで必ず就業する時間(コアタイム)を定め、その前後にいつ勤務してもいいフレキシブルタイムを設定します。
 
例えば、コアタイムを10時~15時とします(休憩1時間含む)。これは必ず勤務しなければなりません。そしてその前後3~4時間をフレキシブルタイムとします。労働者は10時に来て19時まで勤務することも、朝7時に来て16時に帰る事もできます。1日目は10時~15時勤務にして、翌日を7時~20時とすることも出来ます。
 
勤務時間の過不足は1ヶ月の内に清算し、多い分については時間外賃金として清算し、不足分は月内清算するか翌月繰越します。
 
フレックスタイム制は労使協定を締結し、就業規則にその旨を記載しなければなりません。
 
労使協定で定める事項は以下のとおりです。
 
1.対象労働者の範囲
2.清算期間(1ヶ月以内)
3.清算期間における総労働時間
4.標準となる1日の労働時間
5.コアタイムを定める場合はその始業と終了時刻
6.フレキシブルタイムを定める場合はその開始時刻と終了時刻
 
始業時刻と終業時刻は労基法によって就業規則に記載が義務付けられていますので、フレックスタイム制を導入する場合は、コアタイム・フレキシブルタイムは就業規則に記載しなければなりません。

[054]遅刻3回欠勤1日

 

就業規則を見ますと欠勤や遅刻早退についての記述がされている場合があります。欠勤したときには賃金を支払わない旨や遅刻や早退をしたときの賃金の取扱いです。
 
就業規則によくある記述に「遅刻または早退を3回した場合には、1日欠勤したものとみなして、1日分の賃金を控除する」という規定がありますが、この規定は十分注意して使用しないと労働基準法に抵触する場合があります。
 
賃金は元来労働の対価として支払われるものですから、遅刻または早退によって労務の提供がなかった時間分の賃金は支給しなくても「ノーワーク・ノーペイ」の原則に基づき問題とされません。 しかしそこに「減給の制裁」としての要素があれば「労務提供がなされ、本来支給すべき賃金の一部を控除すること」にあたり、法の制限が加えられます。
 
(1)1事案(1件)に対する減給額は、平均賃金の1日分の半額を超えないこと。
(2)複数事案に対して減給する場合にも、一賃金支払期における賃金総額の10分の1を超えないこと。
 
例えば、遅刻が3回ありそのために労務提供がなされなかった時間が8時間とすれば、その遅刻3回を欠勤1日分とすることは問題ありません。
 
しかし、遅刻が10分程度の軽微なものであり、それが3回行なわれたとしても30分でしかありません。これを欠勤とすることは、「ノーワーク・ノーペイ」の原則を超えて「減給の制裁」にあたることになります。
 
その場合は、3回の遅刻が1回の欠勤になるという1事案の減給制裁になり、控除できる額の上限は「平均賃金の1日分の半額」つまり4時間分の賃金に相当します。
 
したがって遅刻した時間(不就労時間)の合計が4時間以上になる場合には、1日分(8時間分)の賃金をカットすることは差し支えありません。
 
しかし3回の遅刻の不就労時間が30分などという場合に1日分の賃金控除を行うと、減給の制裁として4時間を超える時間分の賃金、すなわち、平均賃金の1日分の半額を超える額に相当する賃金が控除されることになりますので、労働基準法に定める減給の制裁の制限に抵触することになります。
 
仮に1日の平均賃金が8,000円とすれば、遅刻3回30分の制裁として欠勤扱いはもちろん不可であり、さらにその件に関して4,000円を超えるカットはできないこととなります。
 
もし、このような軽微な遅刻に対して制裁を科すのであれば、
 
(1)遅刻または早退が3回以上になった場合には精皆勤手当を支給しない
(2)遅刻または早退は不就労時間として賃金を控除する
(3)遅刻または早退が3回以上になったときは、平均賃金の1日分の半額を控除する
 
などと定めるといいでしょう。
 
また、より厳しいものを就業規則で決めるなら「1回の遅刻に平均賃金の0.5日分を控除する」、「3回の遅刻で半日の欠勤とみなす」などと定めることもできます
 
労基法第91条:「就業規則で、労働者に対して減給の制裁を定める場合においては、その減給は、1回の額が平均賃金の1日分の半額を超え、総額が一賃金支払期における賃金の総額の10分の1を超えてはならない」