[092]モーニングコート
男性の礼服といえばモーニングが真っ先にあげられますが、モーニングは正式には「モーニングコート」といいます。
モーニングというくらいですから、昼間の正装です。それもできれば午前中に着用します。組閣が決まりますと大臣が勢ぞろいして写真撮影をするのが通例ですが、このときの衣装は「モーニング」です。組閣決定は大体夕方になるのですが、それでもモーニングです。
モーニングは、上着は黒の無地、ズボンは黒とグレーの縞か黒白の小格子と決まっており、裾の折り返しはありません。ワイシャツはひだ胸のウイングカラーで、ダブルカフスのものを着用します。ネクタイはシルバーグレイのモーニングタイかアスコットタイを、ベストは上着と共地かシルバーグレイのもので、黒いエナメルの靴をはきます。正装は略すると失礼にあたるので細かいところまできっちり決めます。
夜間の正装はテイルコートで決めます。いわゆる燕尾服です。いまどき燕尾服を着る人は社交ダンサーかオーケストラの指揮者くらいなものです。いまではタキシードがその代用となっています。
テイルコートは、ズボンのサイドにシルクのラインが入るのが特長で、フロントボタンは飾りなので、上着はボタンをとめずに着用。上着もズボンも黒が正式ですが、結婚式での新郎用にグレーで着こなすが人気があるようです。白いウイングカラーのワイシャツに白のボウタイを締め、ベストや手袋も白で統一します。手袋ははめないで手に持ちます。
タキシードは燕尾服に替えて着用します。最近の若い世代に人気のある準礼装といえます。結婚式でも、グレーや紺などの色物がお色直しに使われますが、正式には黒です。白のタキシードも正式ではありません。上着はダブル、シングルいずれでもかまいませんが、靴は黒のエナメルのものをはき、カマーバンドかベストを必ず着用します。
なお、フォーマルではベルトは着用しません。必ずサスペンダーを使います。また、チョッキを着用した時は上着のボタンを外しても構いませんが、チョッキを着用していない場合はボタンを必ずします。上着のボタンを外したまま婦人と会うことは、社会の窓(死語?)を開けたままご婦人と会うことに等しいと知るべきでしょう。
さて、日本では昼夜の別なく、ほとんどの慶事・弔事に使われるのがブラックスーツ。ネクタイを白に変えれば慶事に、黒に変えれば弔事にととても便利です。
ただ、このブラックスーツは日本では準礼装として扱われていますが、欧米ではあくまでも略礼装の一種。葬儀用としては通用しますが、慶事には着用しないので注意しましょう。外国人は日本の結婚式を見て黒いスーツの人がぞろぞろいるのでびっくりするということです。向うでは華やか着こなすのが普通なんですね。