第25回-外泊

2018年8月26日

こんにちは、稲垣尚美です。まだまだ暑いですね。うちでは、鈴虫がうるさいくらいに鳴いてます。鈴虫って昼夜関係なく鳴くんですね。風流っていうより賑やかです。

お盆の二泊の外泊で自宅から施設へ帰ってきた朝治さん。食事の時、スプーンを自分で全く持とうとしなくなってしまいました。

朝治さんは、脳梗塞で両手両足に麻痺があるのですが、右手が少し動くので、柄の太い特殊スプーンを使う訓練をして最初は、三口、そして少しずつ増やして調子のいい時なら食事の半分くらいは、自力摂取できるようになっていました。もちろんリハビリの先生の指導、そして私達の補助、声かけなど様々な努力をしてきた結果です。ここまでくるのに半年は、かかっています。なんとか食事を自分で食べてほしいという願いからきています。

それが二泊、自宅へ帰っただけでスプーンを持つことを拒否。それどころか、食事も好き嫌いがひどくなっていて拒否が強く、半分も摂取できない状況です。

家で甘やかされてきたんだなというのは、一目瞭然です。

朝治さんは、脳梗塞になって15年以上経っています。それを朝治さんの奥さんが、ほとんど一人で介護してきました。亭主関白だった朝治さんにたいして、それこそ痒いところに手が届くような介護だったことは、朝治さんの家へ伺ったことがあるので一目瞭然でした。その介護が、朝治さんにとってよかったのか、悪かったのか。

奥さんは、まだ自宅に住んでみえますが、高齢を理由に朝治さんの施設への入所を決意されました。

施設での毎日は、「おばあさんは?」と私達に聞く毎日。「今、買い物に行ってみえますよ」

私達を受け入れられず、奥さんをもとめてみえます。たまに罵声や暴力行為もあります。そんな朝治さんを受け入れられない職員もいます。

現実は、奥さんは何ヶ月に一度、朝治さんの好物のまんじゅうを持って30分くらい訪れるのみです。朝治さんの自宅は、車で10分もかからない場所にあります。

朝治さんを甘やかして介護してきた奥さんは、今、介護から解放されて気持ちが楽になっていると思います。

でも、もっと別の介護の方法があったのではないかと思います。

2002.09.06