第38回 四角形2

2018年8月31日

彼は、孤独にホームの問題と闘っていたのだ。1職員の自分や、他のスタッフに悩みは打ち明けても、決して弱音は吐かない人だった。中立の立場を保ちたいが、私も人間である。どちらに味方に付くかと言ったら、勿論補佐ではない。しかし、それでは現場は上手く回らないのである。

新しい施設長は、彼を見直すことから始めた。今まで崩れていた四角形を立て直すために。

四角形とは、我々日勤、そして夜勤、看護士、厨房スタッフ、それぞれの点を結ぶと四角になる。その四角形が崩れると、ホーム体勢が崩れていくという方程式を教えてくれたのだ。日勤帯、夜勤帯、看護士、厨房、その四角が悪い形をしているため、上手くホームが回っていかない。その原因は、補佐にあると考えたのだ。

私も、補佐が正しいとは決して思わない。しかし、彼を補佐として抜擢したのは組織である。彼よりも、私は現場を理解していない組織に腹が立ちます。彼がそうなったのは、その重い補佐という大役を背負わされたからだと思います。細かいことを言ったらキリがないので、それ以上言いません。

言いたいことは、自分が不向きだと思ったら、重荷は背負わないことです。組織から、重荷を背負わされそうになった時、Noと言える意志が必要だと言うことです。

ホームに常駐するスタッフは、4点からなるので、四角形が成り立つ。施設長は、その真ん中で指揮をとり、補佐は、その四角形の形や問題を施設長に伝達しなければならない。補佐を中心に、そのバランスが崩れていた。

現在、四角形は良い形をしているだろうか?いいえ、相変わらず、歪な形をしています。新たな問題が、形を崩しているのでした。

4点が、それぞれ対立し合っています。四角形は四角ではなく、歪な形をしています。もうバラバラです。表には見えないドロドロしたやらしい形です。プライドや、見栄や、体裁や、欲望の生み出す結果です。

福祉の世界に生きていても、結局は人間なのです。色々な邪念が邪魔をして、入居者に影響が出てしまう結果を生みだしています。上手くやっているホームも、もちろんあると思います。しかし、人間が関わっている以上、仕方のないことだとも思います。

中立を保ちたかったけど、もう我慢できない自分がいました。形にしたら、日勤対夜勤になるのでしょう。夜勤の職員に、沢山好きな人が居ます。しかし、こいつだけは許せない。言うことだけは偉そうなことを言い、汚い仕事は一切やらないのである。綺麗事だけ並べて、自分は汚れないようにしている。まさに今、私が、その四角形を崩そうとしていた。

今まで、一生懸命中立を保ってきたのは、こんな奴にでかい顔をされる為ではない。ホームが上手く回るように。入居者様が、安全に、楽しく暮らせるように。それを願ってきたからである。もう我慢できない。この気持ち、直接、剛速球でぶつけられたのなら、どんなに楽だろうか?

しかし、それをやったら終わりである。色々な気持ちを我慢している他の職員に申し訳がない。上手く行きかけていたけど、やはり一筋縄じゃ行かないよう
である。

こんな四角形じゃ、良いホームになるわけないよな~

2003.12.01

永礼盟