第43回 集団感染

2018年8月31日

こんにちわ、永礼盟です。ご購読ありがとうございます。

我がホーム、大変なことになりました。疥癬以来の大パニックです。ウイルスによる集団感染にやられたのです。

主な症状は、嘔吐と下痢です。テレビ等でも報じられていましたし、社内通達でも、小型球形ウイルスが流行しているので注意せよと促されていました。しかし、まさか我がホームにそのウイルスが蔓延するとは思ってもみなかったのです。小型球形ウイルス、SRSVが蔓延したのです。

それは唐突にやって来て、どんどん広がっていきました。公休明けの朝、救急対応でその日は始まったのです。

出社すると、入居者が1名入院したと言われ驚きました。何が起きているか解りませんでしたが、その慌ただしい、普通じゃない空気は、嫌と言うほど伝わってきました。

申し送りを受けると、すでに5名の入居者に嘔吐と下痢の症状が見られているようです。そのうちの1名が朝方入院となったのです。

始まりは、入居者が嘔吐したことでした。

月に一回の定期検診を受けた方が、病院で嘔吐したと、ホームに帰ってきてから訴えられたのです。すると、何時間も経たないうちに別の入居者から嘔吐や下痢をしたと訴えがあり、あっと言う間に広がっていきました。

我々職員の徹底事項は、マスクとディスポ手袋の着用義務。事ある度に、うがいと手洗いをする。入居者に関しては、疑わしい人の汚物は一つにまとめて完結する。共有部には誘導せず、別の部屋で食事をしてもらう等です。

疥癬対応をした経験もあり、リーダーからの指示を受け、対応に結びつける早さは敏速でした。しかし、次から次へと感染していくのです。すでに手遅れだったのかも知れません。

感染経路は、職員の手からによるものが大半だと思われます。嘔吐物を処理した際、オムツ交換をした際の汚物が、完全に洗い流されていなかったことが原因であったことが解ります。

職員が1人倒れました。直ぐにシフトの変更が行われます。そんなことをしているうちに、新たに職員が嘔吐の訴えをします。3人のスタッフが、わずか数時間の間に感染してしまったのです。

一人目の感染者が出てから、4日目が経ち、やっと入居者の様子が落ちついて来たように思えました。入居者をケアしていた介護職員の殆どが、このウイルスにやられていました。別室での食事介助をした者、オムツ交換した者、嘔吐物を処理した者、まるで魔法にかかるかのように、感染して行くのです。

勿論、指示が徹底されるまで手袋をはめなかったわけではないですし、手洗いやうがいは基本です。しかしこういう結果が出てしまうことに、悔しい思いでいっぱいです。入居者様が苦しまれているのを見ると、いたたまれませんでした。

会社から衛生方面と医療方面のバックアップがありました。専門のアドバイスと、雑用諸々を引き受けてくれたのです。入居者の状態が落ちついてきたので、このまま終結を向かえたいと思います。

今でも、入居者の苦しむ顔が目に浮かび、胸が苦しくなります。介護職員として、こんなに恥ずかしい事はないと思われ、このお粗末な結果をよく胸に刻みたいと思っています。

SRSV...恐ろしいウイルスです。

2004.01.13

永礼盟