第59回 ストレス

2018年10月25日

こんにちわ、永礼盟です。ご購読ありがとうございます。

早いもので、介護職に就いて2年半が経ちました。まだまだ駆け出しで、分からない事だらけですが、後輩も出来てそうも言っていられない状態になってきました。

職員数も増えつつあり、以前からの課題だった自立の方へのサービスを目指しています。職員数が増えているのですが、減っている事も事実です。新しい職員に仕事を教えながらの毎日で、具体的なサービスを実行するのは遠のいてしまっている気がします。

目標とするのは、『食』の充実と、質の高い『レクリエーション』です。要望としてあげられているのは、絵が書きたい、習字がしたい等の芸術系のレク。毎日入浴したい、散歩に行きたい等の習慣系の要望、そして一番多い要望は、美味しい食事が食べたい。という事です。

今までも、沢山のレクリエーションを行ってきましたが、ホームの全員を満足させるのは難しいようです。「私は、折り紙で何かするような子供じみた事はやりたくないわ。」そんな声もあれば、「全員で歌を歌うなんてまっぴらごめんなの。」25名の利用者全員を満足させる事は、とても難しい事のようです。

一番要望の多い食事に関しては、現在の食事が美味しくないと言っているのではなく、代わり映えのしないメニューでいつも同じような食材に飽きてしまっているのです。「また豆なの?」「また魚なの?」「今日の昼もあん掛けだったわよね?」ボソボソと、自立の方の席から聞こえてくるぼやき声。それが、サービスする側、される側にストレスとなって現れているようです。

サービスを受ける側は、届かない自分たちの声に呆れ果て、サービスする側は、そんな声達にウンザリしてしまう悪循環が生まれてしまっています。大きな組織は、その声が届き、実際に改善されるまで、とても時間がかかると言う事です。もしかすると、その声は届いているのにも関わらず、どうにもならないと言う事実もあり得る気がします。

食事に関しては、作られたものが本部から送られてくるために、ホーム自体ではどうしようも出来ないというジレンマがあります。勿論、豆が多かったり、魚が多かったり、食材がかぶるのは、そうしたコスト的な問題があると思われ、そこを見抜ける利用者から「私たちは、蔑ろにされている」というような声が上がる方程式を作り出しています。

そんな日々のストレスを打破すべくは、月に2~3回の外出レク。いつもは行く事の出来ない距離を専門の外出レクスタッフにより可能となる物です。例えば、花見です。ホームの近くの公園にしか行けなかったものを、自然公園までお連れする事が可能となります。または、しゃぶしゃぶや、天ぷら、お寿司や中華、専門のレストランにお連れして、普段味わう事の出来ない『食』を堪能してもらう。等の企画を毎月たてています。

そこにもストレスは存在し、悪循環は生まれます。

外出すると言っても25名全員が外出する事は無理なのです。車の定員もありますし、利用者同士の相性もあります。誤って相乗りさせてしまったら、暴力事件が勃発しそうな方もいらっしゃいます。そこを、考え抜いてプランを作っても、当日になって急に行きたいと言い出す方や、いろいろな病状が重なって、プラン通りに行かない事もしばしば。そこにストレスは存在し、スマートにいかない事を悪く思う利用者と負担に感じる職員の悪循環になって行きます。

利用者の方に喜んで貰うために行う外出ですが、こんな葛藤の向こう側に充実感があります。ヘルパー職の最大の喜びを味わう事が出来るのです。

約2年半の期間を、施設で頑張ってきましたが、ここに来てこのままで良いのかな?と言う気持ちも生まれて来ています。ヘルパーとしてやりがいを感じる事もすばらしい事だと思うのですが、出来ない事にジレンマを感じ、ストレスを背負っては介護職に就いた意味がない気もします。出来る事の方向性を考えだす自分がいるのでした。

2004.05.16

永礼盟