第64回 派閥~その2~
こんにちわ、永礼盟です。ご購読ありがとうございます。前回からのお話の続きですが、落ち着き出した我がホームに研修生を迎え、不穏と言われた頃を振り返ります。
以前の我がホームは、少人数ホームなのに業務が回らない、入居者が不穏、毎日起こる救急対応等、その全てが職員の力不足と考えられていました。それから3年の時が経ち、何が問題であったのか、沢山の犠牲のもとに明らかになりました。
1に杜撰な管理。2に介護度の重さ。3に看護師が常駐しない、4にスタッフの人数不足があげられます。勿論、力不足もありました。
介護度が重いのに、看護師が居ない、初心者の職員が多い、ここは致命的だったと思います。在宅ホームだったので看護師がいなかったのですが、毎日の処置を含め、胃ろうやインシュリン注射の医療行為を強要させられました。
介護度の重さって言っても一言では片付けられないんです。介護度は軽くても、スタッフ数が必要な方も居れば、介護度が重くても、ご自分でなんでもやろうとされる方もいらっしゃるのです。現在25名の利用者が入居している我がホーム、殆どが介護度4~5です。一番目に入る光景は、車椅子の多さです。見学に来て、共有スペースに集まる車椅子の数に驚く声をよく聞きます。
「食事の時は、どうやって食堂まで行ったら良いのですか?」「職員が誘導します。」「この人数を、何人の職員さんで誘導されるのですか?」「職員配置は、1対3の人員配置を心がけていますので、一人が三名様のお手伝いさせていただく事になります。」
そんな営業の声を聞いた事があります。この会話だと、20名の利用者がいたら、毎日最低でも6人は職員がいると思うじゃないですか?しかし、これは利用者に対しての職員全員の割合なので、日に居る職員はもっともっと少ないです。その中には、ケアに携わらないスタッフも含まれます。実際の所は誘導が1名で、もう一人が食堂対応です。
本当に、この1対3にこだわる会社が理解出来ませんでした。宣伝文句はピカ1ですが、それを実現するには物理的に無理な人員配置。職員を増やす事は絶対にNo!カンファレンスの度にタブーとされた意見です。
我がホームの駄目な所を見たケアマネージャーが、確かに職員の力不足もあるが、人数不足は明らかな事実。せめて掃除をする選任スタッフを雇うべきとトップ会議で訴えてくれましたが、突っぱねられたそうです。
骨の髄まで会社の方針を叩き込む洗脳。私は、この組織はカルト集団ではないかと首を傾げたぐらいです。儲けになる事はなんでもやる。全てサービスを隠れ蓑にし、他の老人ホームで入居を断れた方も、ガンガン入居してきます。
なぜ断られるかと言えば、医療行為を必要とする事、問題行為が見受けられる事、いろいろな理由が挙げられますが、そんな理由等眼中なく入居者は増え続けました。
1番厄介だったのは、痴呆徘徊が多かった事。普通の老人ホームで、いろいろな方が入居される中、脱走を繰り返す、物を壊す、暴力を振るう、あちらこちらに排便する。そんな形だけが組織の上に報告され、スタッフの力不足を指摘されたのでした。
我がホームが立ち上げられた時、施設長しか決まっていなかったそうです。既に入居は定員を迎えるぐらいにふくれあがり、そこで面食らって職員をかき集め、スタートしたら介護度が高い上に、初心者のスタッフが多かったと言う杜撰も甚だしい状況。あっという間にクレームの山積み、引き継ぎが行われる前に施設長が交代、雑用処理から始まる施設長業務。また逃げる責任者。そんな事の繰り返しでした。
以前書いたメルマガに『新しい人』と『いなくなる人』がありました。結局、『新しい人』も業務放棄していなくなってしまいましたが、彼が処理してくれた問題は山ほどあったと思われ、されに引き継いだ現施設長が、ガッツリと今の我がホームを支えてくれています。沢山の傷跡の中に今の現状があるのです。
しかし、あれだけ不穏だった我がホーム、スタッフの総入れ替え、数10人代わった施設長、疥癬等の感染症、勿論その傷跡も残ってはいます。しかし1つ1つ、前進している事は明らかなのです。少しずつ、進んで行けたらと思います。
研修生を迎えて平穏になったことを、改めて感じるのでした。
2004.06.22
永礼盟