第72回 デイサービス

2018年10月25日

こんにちわ、永礼盟です。ご購読ありがとうございます。お付き合い下さる読者の方々に、感謝の気持ちでいっぱいです。

さて、先日起きたデイサービスでの一件を紹介したいと思います。何やらデイサービスで怪しい取引がされているようなのです。デイサービスから帰って来た田中さんが、友達から石鹸を譲ってもらったと、喜んでいました。その時は、気にもしなかったのですが、それから田中さんがデイサービスに行きたがらなくなりました。誰が声かけしても、ニコニコ笑っているだけです。どれくらい欠席が続いたのか分かりませんが、ある日、突然出席すると言い出したのです。大きな荷物を背負って迎えの車に乗ろうとするので、デイには必要ないんじゃない? と促しました。どうしても持って行くと言って、頑に荷物を置いてくれません。デイサービスの職員も困っています。最後にもう一度迎えに来てもらう事になり、我がホームの職員で説得に入ります。

荷物の中身は、どうも石鹸のお礼のようです。聞く所によるとその石鹸、不思議な効果があると言うのです。その効果については、デイサービスの友達から教わったが、ホームの職員に教える事は出来ないとの事で、怪しい香りがプンプン臭って来ました。

荷物を持って行けないのならば、お金を持って行くと言って聞きません。そこに、一回りしてきたデイサービスのお迎えが来ます。デイのスタッフと、我がホームの職員でお金の取り合いなります。なんでこんなに頑固にお金を渡そうとするのだろうか? ますます怪しい香りがします。

その日、デイサービスは欠席しました。お礼もせずに、その友達に会う事は出来ないと言う田中さん、ご家族に相談すると、お礼を用意するので次回に持たせて欲しいと言われ、高級そうなお茶菓子を預かりました。しかし、田中さんは納得しません。いつもニコニコ笑顔の田中さんが、「こんな物じゃ、納得する訳がない! もっと高価な物でなくてはいけないのに、息子は何も解っていない!」とご立腹です。唯一、心を許している職員に本音を話してくれたようです。なんとか、息子さんが用意してくれたお礼を持って、次回は出席してくれる事になりました。

当日、やはりお金を持って行きたいと言われ、お金の取り合いになりました。田中さんの頑固さは、筋金入りです。持って行くと言ったらききません。デイサービスのスタッフ、我がホームの職員の声かけも空しく、お金を持って行く事になります。デイの方でも、上手く声かけを試みると言われ、お金を持ったままデイサービスに出かけられました。

ちょうどお昼過ぎぐらいに電話があり、お金は一度預かったと言われ、職員同士で「なんで預かる事が出来たんだろう?」と不思議に思っていました。その日の夕方、デイサービスのケアに感動した職員が、「永礼さん、永礼さん、田中さんがなんでお金を渡したか解りましたよ。」そう言って、デイでの対応を話してくれました。

デイの所長さんが、「田中さん、あなたがお金を渡したい気持ちはよく解ります。しかし、それはあなたの自己満足です。お金をもらった結城さんがどんな思いをされるか?あなたはお金を渡してすっきりするかもしれませんが、お金をもらった結城さんはそれ以上のお礼をしなくてはいけないと思うのではないですか?」そうお話してくれたそうです。

我々は、怪しいから。それだけの理由だけでお金を持って行かないようにしていたのですが、デイサービスの所長さんは田中さんが義理堅い事を逆手に取り、お金を渡せば相手が迷惑すると言う視点で対応してくれたようです。これで、田中さんはお金の話をしなくなりました。その後、石鹸をもらってくる事もなくなり、一件落着したのかな? の一歩手前まで来たような気がします。まだ、石鹸の正体がつかめていないので何とも言えないのですが、ホームのリーダーはこれ以上悪い方向に行かないだろうと判断しているようです。

しかし、この対応をあまり良く思っていないようで、自分や同僚が良いと思っても、全ての人が納得する訳ではない事に、対応の難しさ、ケアの難しさを痛感しました。

考え方には、色々な視野あり、角度があるんだと妙に納得してしまいました。私は、所長さんの対応に賛成なのですが、この話をした人の反応を見ると、賛否両論のようです。人間相手ですし、答えがないのはよく解りますが、自分の対応に自信が持てない気がして来ています。

その答えを探す事に、きっと意味があるんだろうと思うのですが、自信が無いときは、何をするにも駄目ですね。

2004.08.28