第93回 虐待死

2019年3月16日

痛ましい事件が起きました。介護職員が入所者を虐待死させてしまった事件です。ニュースを見れば、新聞を読めば、こんな信じられない事はないでしょう。入所者に虐待していたなんて、目を覆いたくなる様な事実だと思います。同じ介護職員として人事ではなかったので、メルマガという形で発信させて下さい。

今回事件を起こしてしまった容疑者と、私とは何が違うんでしょうか?きっと何も違わないと思います。もしかして、このような事件、事故を起こしてしまった当事者は私だったかも知れないし、違う介護職員だったかも知れない。あってはならない事だけど、私にはなぜこう言う事故が起こったのか想像出来ました。

この施設は、全入所者が12名の小規模の介護施設のようです。痴呆症状がある方が多く入所されている印象を持ちました。12名程の利用者の場合、一人で夜勤をするというのは法律上問題ない事のようです。しかし、それがどれだけ大変かと言う現状は、それを経験した介護職員でしか解らないでしょう。

どのような勤務体制だったのでしょうか?自分もそうであった様に、一人で行う夜勤業務の心理作用を、業務体制で軽減出来たのではないでしょうか。もしも、夜勤者が二人以上居て負荷を軽減出来ていたならば、今回の様な事件は起きなかったように思います。しかし12名の施設で夜勤者を二人置く事は組織上有り得ない事です。私も会社から言われ続けた事です。「この入居者数に、夜勤二人体制は有り得ない」と。

私のホームでは、介護職員が朝食を作るので大変でした。時間内にサービスする事も大変なのに、「あれは食えない」「これは食えない」「かたい!」「まずい!」「冷めてる!」「熱すぎる!」と訴えられ、心の中で「だまって食え!」と何度思った事でしょうか。

容疑者と被害者の間に何があったのかは解りません。しかし、入所者にガスファンヒーターの熱風を当てる等の虐待行為に走ってしまった…..

もしも、同じ状況の施設があったら是非検討して頂きたい。私のホームでも、介護度を検討してくれる様になり、20名以下の入居者でも夜勤は2名体制になりました。この事件の傷は深いと思います。しかしその傷から何かが変われば、とても意義があります。

悲しい事件でしたが、日本の高齢化社会と介護、福祉業界に投げ掛けられた問題です。議論して行く価値はあるのではないでしょうか?

2005.02.27

永礼盟