第5回-春のお出かけ

2018年8月26日

こんにちは、お元気でお過ごしでしょうか。
今回は桜の季節に向け、車椅子での外出についての体験談です。

去年の四月、自宅と病院の往復しか外出の機会がなかった父を強引に誘って、両親と娘二人を連れて、実家近くの桜の名所に出かけました。
当時も現在も、父の症状はあまり変わりはないと思います。
ただ病院のリハビリには週に二回ほど通っていたので、外出の機会も今よりずっと多かったのですが。

二歳の長女と、まだ四ヶ月程の次女を連れての外出には、私も慣れていました。
しかし、体の不自由な父を連れて行くのには、正直不安がありました。
けれど、せっかく身頃を迎えている桜の花を、これから両親とともに見ることが出来るのは、あとどの位なのかな、と考えるとどうしても連れて行きたくなったのです。

私の車は定員七人のいわゆるミニバンで、荷物もかなりつめる大きさです。
それでも、娘二人の座るチャイルドシートが取り付けてあり、下の子のベビーカーと、そして父の車椅子を積むとなると、考えていたよりも大荷物でした。
結局、車椅子は車輪を取り外して分解し、やっと乗せることが出来ました。

車に乗ってしまえば、駐車場からお花見の場所まではすぐ近くなので、あまり心配していませんでしたが、駐車場から出る時、スロープが急だったり、ちょっとした段差で動けなくなったりして、実際に出かけてみないと考え付かないような困難が待ち構えていました。子供づれではちょっと無謀だったかな、やはり男手がないと心もとないなぁと思ったりもしましたが、なんとか公園までたどり着く事ができました。

公園の中には、幾つもの出店がおでんや団子の看板を掲げ、沢山の花見客で賑わっていました。あちこちでビールやワンカップを片手に談笑する人々。若いグループは、バーベキューをしたり、即席カラオケで盛り上がっています。
場の雰囲気に、娘もワクワクした様で、あれが食べたい、これが欲しいと言いだし、孫の要求に、母も目じりを下げて応じていました。
父も久しぶりに外で飲むビールに喉を鳴らし、暖かい春の日ざしにとても穏やかな笑顔を浮かべていたのを思い出します。
満開の桜の木の下で、いつもは嫌がって写ろうとしない写真も、孫を抱いて一緒に撮ることができました。
花の力はすごいですね。両親ともにとても幸せそうな笑顔で写っているんです。
その写真は、実家に行くと今でもすぐ目の付くところに飾ってあります。
よほど嬉しかったのでしょうね。
今年も一緒に行けるといいな。

ただ公園などのトイレは、車椅子での利用ができないことが多いですね。
出かける前にまず心配したのがトイレの事でした。
幸運な事に、その日は朝から便通があったため、いつもリハビリなどで病院に出向くときに使っていた、尿を取る容器を携帯して外出する事ができました。
今もそうですが、外出するには、まず朝便通があったかどうかで、行く行かないが決まってしまいます。
先日も、天気も良さそうだし久しぶりに外出しようと計画していましたが、トイレが済んでいなかったので、父が出かける気になれず結局断念しました。
今は大きなショッピングセンター等は、車椅子で利用できるトイレが設置してあります。
またちょっとした観光地なども、調べてみるとそのように配慮したトイレがある場所が沢山あります。
ただ、いくらトイレがあるのは分かっていても、済ませてからでないと父は安心して出掛ける事ができないようです。

どうしても自宅にこもりがちになってしまう介護生活。
これから日に日に暖かくなってきます。
事前に下調べをしておくと、安心して出かけられる所が沢山あるものです。
最初はちょっと勇気が必要かも。でも意外となんとかなるものです。
出かけてみて、新しく発見する事もあります。
介護サービスを利用されている方は、季節によっての催しなども企画されているのでしょうか。我が家は、まだ利用した事がないので、リハビリに行かなくなって、本当に父の生活の場は、家の中だけになってしまいました。
少しでも外出する事で、介護者も要介護者も、普段の生活とちょっと違った空間に身を置くことで、気が晴れるのではないかと思います。
私もこれからいい季節を迎えるので、頑張って父を外に連れ出そうと思ってます。
皆さんも、可能であればちょっとお出かけ、いかがですか?
渡部紗也
2005.02.26